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それから、もう1つ地下を掘ると言う事は、我々が地下の世界に到達して、そこで起きている諸現象に、その現場での理解を含める、われわれは地表に居て実は地下で起きている様々な複雑な現象については殆ど知らない、で実際にその場所に到達してその場所で観測などを行って、地下の現象そのものを調べると言う事があります。これは掘削でなければ当然やれないと言う事であります。そう言う重要な研究であります。さらに掘削を致しますと地表の色々な雑音と言ったら良いか、そう言う雑音から逃れて、地下のいろんな現象、さらに深い地球深部まで到達する事ができます。そこに於いて我々は、丁度、聴診器で人間のいろんな営みを知ることができるように地球内部の営みについて非常に明瞭に知る事が出来る。先程、Sean Solomon先生が言われた、孔内で行う地震観測と言うものは典型的なものであります。で、この様な目的に於いて地球を掘削していろんな研究を行う訳ですが、1つこの様な地球掘削、海洋掘削と言うものが我々の自然観にどのように貢献出来るのかと言う事に関して、白亜紀の世界と言う事についてお話したいと思います。

 

(FIG.-3)

これは深海掘削船JR号ですが、1万8千トン、150m位の長さで、これを世界各国がアメリカを中心に日本その他の国々が参加して国際共同で運航している訳です。大きな掘削やぐらを持って世界のどの海、たぶん今の所は余り氷の張っているような所、例えば北極海のような所には未だ行っていませんが、世界の殆どの海をカバーして深海底の掘削を行ってきました。いろんな成果が上がりましたけれども、勿論プレートテクトニクスと言う事を証明したと言う事は最大の成果の1つですが、私が1つ興味を持って居ることの1つに、こう言うことがあります。

 

(FIG.-4)

JR号は世界の各地で掘削をした時に、今から1億年前位のある時代に世界の海に真っ黒な泥の層、これなんですけれど、至る所で溜まっていると言う事が判ってきました。これはブラック・シェークと言うのですけれども黒い有機物の泥です、ヘドロみたいなモノだと日本の言葉で言えば良いと思うのですが、そのヘドロの層が至る所で溜まって居ると言う事を発見したのであります。

 

(FIG.-5)

この地層は実は陸上にも出ている、例えば、これはイタリアのアペニー山脈の麓にある地層ですけれども真っ白い地層がずっと連なっています。ここに黒い縞が、丁度石切場の所に見えていると思うのですが、1m程の真っ黒い地層で上下は有孔虫と言う海に住む石灰質の殻を持つプランクトンの化石が溜まって居ます。

 

(FIG.-6)

この様な小さい200ミクロン位の、普通は顕微鏡サイズで見なければならないですが、こう言う海のプランクトンが溜まって真っ白のチョーク層ですね、ドーバー海峡で見られる様な有名なチョーク層が溜まっていますが、その中に幾つかの層準、ここにはたくさんの黒い筋が有りますが、ここでは1枚の非常に明瞭な層が有る。何回か白亜紀のこの時代に真っ黒な泥が溜まったと言う事が判ってきたので有りまして、真っ黒な中にはこの様なプランクトンの化石が全く含まれて居ない、一体この泥はどうして溜まったのか?と言う事が非常に問題になった訳です。それを解く鍵は、実は以外な所から現れて来たのです。

 

 

 

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