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水中シャトルSIRENEの制御:システム設計と海域実験(OMAE98-4303)

(文責:藤井)

C. Silvestre, A. Aguiar, P. Oliveira, A. Pascoal, (IST, リスボン)

E-mail;antonio@isr.isr.ist.utl.pt

 

1. 概要

本稿は、水深4,000mの海底ステーション(Benthic Laboratory、以下「ステーション」と呼ぶ)へのアクセスのための自律型水中シャトル「SIRENE」の開発について紹介する。

非線型流体力学モデル及び水平・垂直面での艇の操縦性、安定性理論の一つを示すことができた。制御理論は旧来のline-of-sight法を組み合わせたものである。そして、IFREMER(仏)とIST(ポルトガル)合同でのツーロン沖での海域実験結果を示す。

 

2. 序

海底ステーションにより、同時に長時間観測することは非常に重要なこととして評価されつつある。しかしながら、ステーションへのこれまでのサービスや展開の方法は、有人潜水船や水上船からの専門家達による恒久的な支援が必要で、いかにもコスト高であった。例えば、6,000m級有人潜水艇「NAUTILE」の潜水士達によってサポートされる深海掘削孔へのリエントリー用の海底ステーション「NADIA II」の如くである。

そこで、IFREMER(仏)を中心とする欧州チームは「SIRENE」と呼ぶシャトルを開発した。それは、海底下4,000mヘステーションを運び、設置し、爾後のサービスを行うものである。

この研究は、海底設置型ステーションのための展開とサービスのためにEU開発プロジェクト「DESIBEL」として進められてきたもので、IFREMER(仏)、IST(ポルトガル)、THETIS(ドイツ)によって遂行されてきた。

本稿の第一部では、非線型流体運動と変化する流れの中での「SIRENE」の制御設計に焦点を当てる。

第二部では、ツーロン沖でIFRBMERとIST共同の海域実験結果から制御の理論と実験の対応について紹介する。

 

3. SIRENE艇調査ミッション

1] 艇の特徴

SIRENEは図-1の如く、長さ4.0m、幅1.6m、高さ1.96m、空中重量4t、最大潜航深度4,000m、2ヶの推進スラスタ、1ヶのサイドスラスタ、1ヶの垂直スラスタ、GM;36cm、ステーションは立方体で2.31m3の体積、水中ではSIRENEはマイナス重量、ステーションはプラス重量、併せてニュートラル重量となっている。

2] ミッション

基本的なミッションはステーションを定位置に設置することである。合体して母船から0.5〜1m/sで自然に沈んでいく。海底まで100mのところで、合体でニュートラルとなるようバラストを投下する。それからSIRENEはステーションを操縦し、所定の位置に収め、切り離し後、水面へ浮上する。

一度設置されると、ステーションは次々と予め決められた実験を行うことになっている。また、要すれば、SIRENEはステーションを別の位置に据え替え、固定したり、電磁気トランス方式によりバッテリーに充電することもある。

 

 

 

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