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(1)一般事情
 モーリタニア・イスラム共和国は、西アフリカの北部に位置し、西部は大西洋に面し、北部はアルジェリア及び西サハラと国境を接し、東南部はマリ共和国、南部はセネガル共和国と、それぞれ国境を接している。
 国土面積は、1,025,520?2(日本の約2.7倍)、人口は約235万人(96年央)であり、首都をヌアクショット(人口13.5万)におく。
 人種は、3分の2がアラブ系モール人、3分の1が黒人系であり、宗教はイスラム教(国教)であり、主に牧畜業に従事している。
 1970年代以前には、国民の約85%が牧畜業に従事していたが、その後70年代後半からの大早ばつにより、牧場の約80%は砂漠化し、家畜に大被害をもたらした。
 この結果、多数の遊牧民が食料と職を求めて大都会へ集中した。
 このため、遊牧民族は年々減少し、近年では総人口の20%程度を占めるに過ぎない。
 モーリタニアの内政では、1984年のクーデターで成立したタヤ政権は、近年のアフリカ諸国における複数政党制導入等民主化の流れに逆らえず、92年に大統領選、国民議会選、上院選を実施し、一連の民主化プロセスが実施に移され、軍事政権に終止符が打たれた。
 その後、言論の自由、政党活動の自由を認めるなど民主化の定着、隣国との関係改善、経済再建を推進してきている。
 しかし、依然として経済的・社会的困難が混乱と不安定を惹起する可能性が残されている。
 一方、外交面では非同盟中立路線を貫いており、アラブ連盟の一員であると共に、アラブ・マグレブ連合にも属し、イスラム諸国間の協力に積極的な姿勢を示している。
 また、西サハラ問題については中立の立場をとっている。
 他方、隣国セネガルを含む西アフリカ諸国との関係強化を図ると共に、民主化の推進および国際社会との連帯をアピールし、西側ドナー諸国との関係強化を目指している。
 日本にとっても、サハラ以南アフリカにおける第3の輸入パートナーである。
 モーリタニアの経済は、牧畜、水産、鉱業部門を中心に動いている。
 特に、水産物、鉄鉱石の輸出に外資収入を依存しており、輸出総額の95〜97%を占めている。
 現在モーリタニアにおいて実施されている第3次経済構造調整計画中の、95年、96年の経済成長率は、4.6%、4.7%を達成し、IMFからも構造調整の優等生と評されるほど成長している。
 他方、水産物、鉄鉱石は国際市況の状況に左右されやすく、対外債務も大きく(97年末23億6,500万ドル)、財政基盤も脆弱である。
 世銀の推定によれば、1994年の国民総生産(GNP)は10億6,300万ドルで、1人当りでは480ドルである。
 また、1985〜94年の期間の1人当りGNPは、年率0.2%の割合で増加しており、この間の人口は年率2.5%の割合で増加している。
 一方、国内総生産(GDP)は、85〜95年の期間では、年率2.7%の割合で増加しており、94年、95年、96年はそれぞれ4.4%、4.6%、4.7%の成長を遂げている。
 GDPに占める産業部門別シェア(96年)は、農・漁業が29.1%、鉱業12.3%、製造業3.8%、サービス業33.5%である。
 農業部門(林業・漁業を含む)は、94年GDPの25.5%を寄与し、労働人口の62.6%がこの部門に従事している。
 モーリタニアの農業は、原始的でかつ小規模であり、比較的肥沃なセネガル河沿岸地帯を中心に、粟、とうもろこし、米、大麦、小麦などの栽培が行われている。
 近年、穀物の生産は干ばつによって著しく被害を受け、96年は前年の約50%の生産高となっており国内需要に対する不足量は約20万トンに達するものと思われる。
 このため、国際援助機構からの援助や海外からの輸入に依存している。
 政府は、自給自足を2000年までに達成することを目標に掲げ、農業開発を推進しているが、その達成は困難と思われる。
 森林資源は主に南部地方にあり、野生アカシアからアラビアゴムを生産し、その殆どがセネガル経由で海外に輸出されており、同国唯一の輸出農産物となっている。
 漁業は、全輸出収入の56.8%(95年)を占め、GDPの5〜10%を占めており、最重要外貨獲得源となっている。
 工業部門(鉱業、製造業、建設業、電力を含む)は、94年GDPの31.5%を寄与し、労働人口の11.6%がこの部門に従事している。
 世銀の推定によれば、85〜95年の期間のGDPは、年率2.2%の割合で増加し、95年のGDPは4.9%の成長を遂げている。
 鉱業は、94年GDPの11.4%を寄与している。
 主な鉱産物は、鉄鉱石であり95年の輸出収入の39.9%を占めている。
 鉄鉱石は、永年にわたりモーリタニアの最も重要な外貨獲得源として、同国の第1位の輸出商品(79年には輸出総額の90%)であったが、世界需要の減退により、現在では魚類輸出に次ぐ第2位に後退している。
 鉱物資源は、鉄鉱石(推定埋蔵量60億トン)のほか、銅鉱石、石膏(推定埋蔵量40億トン)、燐鉱石(推定埋蔵量9,500万トン)、金などの開発も進められている。
 更に、油田も発見されて開発が進められている。
 鉱業のGDPは、90〜94年の期間に年率1.1%の割合で増加しており、94年の成長率は23.6%(IMF)を記録している。
 製造業は、94年GDPの10.9%を寄与している。
 このうち、魚類加工が最も大きいシェアを占め4%以上である。
 輸入原油を含めた鉱物の加工がこれに次いでいる。
 製造業のGDPは、85〜95年の期間に年率0.2%の割合で減少しており、94年には18.2%の減少となっているが、95年には逆に10.4%の成長を記録している。
 なお、電力関係では、総輸入額の9.4%(95年)にも達する燃料・エネルギーへの支出を軽減するため、政府はセネガル河に建設した水力発電所利用に期待しいている。

 

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