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(1)一般事情
 セネガル共和国は、アフリカ大陸の最西端に位置し、北はモーリタニア、東はマリ、南はギニアおよびギニア・ビサウとそれぞれ国境を接している。
 国土面積は、196,722k?(日本の約0.52倍)、人口は857万人(96年推定)で、首都をセネガル(人口、約1,641,400人)におく。
 言語は、フランス語が公用語であるが、ウオロフ族など各部族が、独自の言語を日常使用している。
 人種は、ウオロフ族35%、ブル族20%、セレール族15%、その他である。
 宗教は、イスラム教徒が90%、伝統的宗教徒が5%、キリスト教徒5%などである。
 セネガルは、アフリカ有数の民主主義国家であり、現在、内政は一応安定している。
 ただし、80年代初めより激化したMFDC(カザマンス分離独立運動)との内紛が今も続いており、また、15,000〜20,000人ほどの難民が、ギニア・ビサウに流れ込んでおり、両国国境付近も不安定な状態となっている。
 セネガルの外交は、旧宗主国フランスとの協調を基軸とし、西側寄りの穏健な非同盟主義政策をとっている。
 また、アラブ諸国とも緊密な関係を有している。
 さらに、OAU等地域機構への積極的な関与、予防外交への取組みを通じて、アフリカ全域との関係強化を図っている。
 セネガルの経済は、1994年前半は通貨切り下げ(50%)の影響を受けて物価が急騰し、国民生活が圧迫されたが、後半には、通貨切り下げのプラス面が出てきて、景気が徐々に回復した。
 その後も、政府は緊縮財政をとり自由化・民営化に努力した結果、国家歳入も増加、インフレ率、経済成長率等マクロ経済状況は、大幅に改善されてきている。
 今後は、民間セクター支援、投資環境整備が課題となっているが、現在政府は、第9次経済社会開発計画(1996〜2001年)を策定中である。
 1995年のセネガルの国民総生産(GNP)は、世銀の推定によると、50億7,000万ドル(1人当り600ドル)であり、1985〜95年の期間では、年率1.2%の割合で減少している。
 この間の人口増加率は、2.8%である。
 また、1985〜95年の期間で、国内総生産(GDP)は年率2.5%の割合で増加しており、実質成長率は95年4.8%、96年5.2%となっている。
 農業部門(林業・漁業を含む)は、95年GDPの21.0%を寄与しており、全労働人の74.2%が従事している。
 セネガルは従来から、落花生のモノカルチャー農業国として知られている。
 主要換金農作物としては、落花生のほかに綿花がある。
 農作物は、これらの他に国内消費用として、粟、とうもろこし、ソルガム、メイズ、米および野菜類が生産されている。
 落花生、落花生油、落花生菓子の輸出は、総輸出額の9%(93年)を占めている。
 近年、燐鉱石、燐酸塩、魚類(缶詰を含む)などの輸出が増大し、落花生の比重が減少しているものの、依然として貴重な外貨獲得源となっている。
 セネガルでは、干ばつなど天候不順による穀物生産の低下による国内食糧不足を補うため、毎年穀物(主として米)を輸入(94年579,000.トン)している。
 このため、政府は2000年までに基本食料の自給自足の達成を目指し、農業の多様化、米作面積の拡大、家畜の増産、水資源の開発と灌漑計画に力を入れている。
 なお、1985〜95年の期間における農業部門のGDPは、年率0.1%の増加を記録している。
 94年の増加率は11.9%であったが、95年は逆に0.9%の減少となっている。
 牧畜は、家畜飼育頭数(95年)が牛285万頭、羊480万頭、山羊325万頭、豚32万頭、馬50万頭、ろば36万頭、らくだ6千頭と年々増加しており、皮革の輸出も順調な伸びを示している。
 林業は、国内市場が狭いので、主として丸太または木材で輸出している。
 政府は、国土の砂漠化を防ぐため、85年以来、全国緑化計画を実施しており、25年間にわたって毎年14万ヘクタールの植林が行われる。
 地下資源の開発は、燐鉱石が落花生とともに輸出に大きく貢献している。
 84年には、セネガル北東部のマタムに燐鉱石の埋蔵(推定4,000万トン)が新たに発見されている。
 また、同年にエムブバの燐酸肥料工場およびダルークードの硫酸・燐酸工場が生産を開始している。
 鉄鉱石は、セネガル東部のファルム鉱脈に3億7,100万トンの大埋蔵が確認されている。
 東部地方では、ウラニウム埋蔵の試掘が行われている。
 また、サボダラ地方では金の埋蔵が発見され、その開発が計画されている。
 石油は、海岸地方の沖で、推定3億トンの埋蔵が確認されているが、隣接するギニア・ビサウとの領界線の紛争により、開発活動が妨げられている。
 シェル石油は、オフジョアと内陸での石油探査活動を続けており、84年には国営石油会社(Petrosen)が設立されている。
 天然ガスは、既に77年に沖合で発見されている。国連の推定によれば、鉱業部門のGDPに占める割合は0.3%(93年)であり、1980〜90年の期間では、平均年率4.1%の増加を記録したが、1990〜93年では平均年率9.6%の減少となっている。
 鉱業部門の主生産物としては、燐鉱石、塩、クリンカー、白土、天然ガスなどがある。
セネガルの工業は、食品加工(特に魚類、落花生、砂糖の加工)、織物、石油精製(輸入原油使用)などである。
 なお、精油はダカールにおいて行っている。
 世銀の推定によれば、製造部門のGDP(95年)は、12.5%を寄与している。
 製造部門のGDPは、1985〜95年の期間で、年率2.8%の割合で増加を示しており、このうち94年は0.6%、95年は9.6%の増加をしている。
 セネガルにおける使用電力は、殆ど火力発電から供給されている。
 マナンタリ水力発電所の建設が1992年に開始されており、2000年には電力供給ができることになっている。
 これにより、セネガル国内の需要電力は全て賄われることになる。
 燃料およびエネルギー(精製用原油を含む)の輸入は、輸入総額の41.4%(95年)を占めている。
 工業生産は、GDPの13%程度を占めているが、政府は雇用機会の創出を図るため、首都ダカールの近郊に工業地帯を設けて、外国企業の誘致に努力している。
 この自由地帯では、外国企業は関税、租税、その他の制限を免除されているが、期待したほどの成果は上がっていないのが現状である。
 セネガルは、全労働人口の20〜30%(84年推定)が失業人口であり、この解決が大きな問題となっている。
 このため、政府は雇用創出、プロジェクトヘの融資、労働集約企業への投資、中小企業への民間投資の奨励、学卒者への雇用機会の優先供与など各種の応急対策を、相次いで実施している。
 政府が最も重視しているのは、生産部門への投資であり、毎年1万人の雇用増を見込んでいる。
 また、鉱工業のほか、食糧自給政策のための農業の開発、運輸通信網の整備近代化などに特に力を入れている。
 セネガル経済は依然として、海外からの援助および投資に大きく依存している。
 日本も、セネガルを西アフリカ仏語圏の援助重点国として、1996年までに有・無償資金協力780億500万円を供与しており、95年には、フランスに次いで2位の7,280万ドルを援助している。

 

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