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(1)一般事情
 コートジボアール共和国は、アフリカ大陸の西岸に位置し、東部はガーナ、西部はリベリア、北部はギニア、マリおよびブルキナ・ファソと、それぞれ国境を接し、南部はギニア湾に面している。
 国土面積は、322,463k?(日本の0.85倍)、人口は1,478万人(96年央推定)で、首都をヤムスクロ(人口:市部11万人、首都圏13万人)におく。
 気候は一般に熱帯気候で、高温・多湿・多雨であり、沿岸地方は5月〜7月および10月〜11月、中部地方は3月〜5月および7月〜11月、北部地方は6月〜10月が雨季である。
 同国最大の商工都アビジャン(旧首都)の平均気温は、1月が81゜F(27.2℃)、7月が75゜F(23.9℃)、年間降水量は2,100m/mである。
 言語は、フランス語が公用語であるが、バウレ語など各種アフリカ民族の言語も日常使用されている。
 宗教は、住民の60%は伝統的宗教の信奉者であり、ほかに回教徒30%などがいる。
 内政は極めて安定しており、98年は2,000年に予定されている次期大統領選挙の中間にあり、各政治勢力の動きは本格化せず、政情は平穏に推移する模様である。
 コートジボアールの経済は、1950年にブリデイ運河の開通により、アビジャン港が開港したため、急速な発展を遂げた。
 独立後の1960年以降70年頃までは、11%の高率の成長(象牙の奇跡といわれている)を遂げた。
 70年代に入ってオイルショックやコーヒー、ココアなどの国際市況の乱高下により、成長はやや鈍化したものの、6%〜8%の成長で推移し、現在ではブラック・アフリカにおける非産油国の中では最も豊かな国になっている。
 1996年におけるコートジボアールの国内総生産(GDP)は106.9億ドル、1人当りGDPは620ドル、GDPの伸び率は7.2%であった。
 97年も輸出部門の好調と投資の拡大により、実質GDP成長率は6.6%前後となった模様である。
 農業部門(林業・漁業を含む)は、1996年にGDPの33.3%を寄与し、同年における労働力の約55%が、この部門に従事している。
 農業部門は、自由化の進展により各産品の生産が増加し、これが輸出の伸長と農業所得の増加をもたらしている。
 コートジボアールは、世界最大のココア生産国であり、カカオ豆の輸出は輸出総額の27.7%(1995年)を占めている。
 また、コーヒーはアフリカ第1位のコーヒー生産国、世界第4位のコーヒー生産国であり、コーヒー豆の輸出は輸出総額の8.5%(1995年)を占めている。
 カカオとコーヒーが外資獲得用農産物の主要輸出品であり、80年代後半から、90年代前半にかけて経済が長期低迷していた大きな原因は、カカオ、コーヒーの国際市況の悪化によるものである。
 農産物には、このほかバナナ、パイナップル、パーム油、ゴム、米、トウモロコシなどがある。
 コートジボアールは、パーム核およびパーム油の世界最大生産国の一つである。
 ゴムは、主として南西部および南東部地域の大農園、その他小農園を中心に開発されている。
 パイナップルは、1960年の独立当時から開発が進められ、現在では重要な輸出品の一つとなっている。
 経済活動の多様化が進んだこともあり、GDPに占める農業生産は、近年やや低下しているが、農業はコートジボアール経済の基盤であり、最も重要な外貨収入源であることに変わりない。
 森林開発は、植民地時代早くから開始されており、原木輸出のため1950年代には伐採量が15万m3に達したが、輸送路の不備により奥地に進出できなかった。
 その後、木材需要の伸び、木材価格の上昇、道路網の整備、特に1972年のサンペドロ港の開港などにより、73年には伐採量が520万m3と飛躍的に拡大し、サンペドロ港のみで100万m3の原木輸出が行われた。
 木材は、コートジボアールにとって、コーヒー、ココア、石油製品と並んで重要な輸出品であり、73年には木材輸出は輸出総額の34%、78年には13%を占めていたが、近年は極度な伐採の結果、森林資源が枯渇し、林業部門の重要度が低下してきている。
 因みに、95年の木材輸出は輸出総額の9.2%となっている。
 このため、政府は原木伐採を規制し、現地加工による付加価値を高めた輸出を図る方向に転向したが、木材加工業も伸び悩んでいる。
 政府は、1966年に林業開発会社(Societe de Development des Plantations Forestieres,“SODEFOR")を設立し、新植林地の造成、植林事業の促進、林産品市場の開発に努めているが、森林保護の観点から伐採可能地域が縮小され、森林資源は減少の脅威にさらされている。
 畜産業については、コートジボアールは恒常的な動物性蛋白質(魚介類を含む)の自給が困難な状況にある。
 このため、政府は1970年に牧畜開発公社(Societe pour le Development des Productions Animales“SODEPRA")を設立し、家畜飼育法の近代化、飼料の改善等畜産部門の拡充に努力した。更に、SODEPRA事業の一環として、人材の育成、飼育技術、種畜の供給を開始し、フランスの技術援助を得て種畜の生産、飼料の増産などの事業を開始した。
 この結果、1970年当時の牛27万頭が80年には54万頭、92年には118万頭に増加し、羊・山羊についても70年当時の150万頭(羊90万頭、山羊60万頭)から、92年には212万頭(羊120万頭、山羊92万頭)に増加している。
 鉱・工業部門(鉱業、製造業、建設業および電力事業を含む)は、1996年にGDPの22.1%を占め、労働力の約8.5%がこの部門に従事している。
 鉱業部門がコートジボアール経済に占める比重は極めて低く、GDPの僅か1.2%程度である。
 工業用ダイヤモンドやマンガン鉱が、民間会社によって若干産出されてきたが、ダイヤモンドの大部分は国外へ密輸出されている。
 金鉱石の埋蔵(推定4,500kg)は、1990年1月以来開発され、かなりの成果を収めている。
 鉄鉱石、銅、ニッケル、燐鉱石、ボーキサイト、コバルトなどの埋蔵も発見されているが、開発は進んでいない。
 石油資源は、1977年に発見され、80年代に入って採掘が開始されている。
 石油生産は95年から本格化しており、石油製品の輸出は、全輸出額(96年)の9.5%を占めるに至っている。
 コートジボアールの製造業は、1960年の独立前には繊維、パーム油精製以外には殆ど発展していなかった。
 これは、国内市場が狭小であること、工業国から遠距離にあること、エネルギー源がないこと、産業資本・人材・技術がないことなどの理由によるものであり、独立後、外国の資本、技術および人材を導入することによって、急速に工業化が展開された。
 製粉、コーヒー加工、ココア加工、パーム加工、繊維捺染加工、コーヒー用ジュート麻袋製造、製靴、セメントエ場、建材、自動車組立て、石油精製などの大型工場が相次いで設立された。
 政府は、国産原材料の付加価値を更に高めることにより、輸出産業の育成を奨励した。
 繊維産業分野では、国産綿花を加工する紡績工場として日経合弁企業が操業し、その後米国系縫製工場が設立され、これらは輸出能力をもつ工場として発展した。
 その他の分野においても、スイス系企業の製造するインスタント・コーヒーが近隣諸国への輸出商品として定着しており、ココアについてもフランスやスイスが進出している。
 現在、これらの工場が生産するココア、バターは重要な対日輸出品目となっている。
 また、外国資本による輸出を目的とした精糖工場も操業しており、コートジボアールの工業化は、外国資本を中心として推進されている。
 穀類・豆類加工・製粉業、木材加工業、化学工業、石油精製業、食用油製造業、靴・皮革製造業、機械・電機工業、繊維縫製業、その他各種工業分野のうち、近年特に資本金の増加がみられたのは、石油精製、ゴム加工、機械・電機工業の分野である。
 また、資本金の大きい分野は、石油精製業、食品加工業、木材加工業、化学工業、食用油製造業の順となっている。
 主要国別資本金構成では、独立当時はフランス資本のシェアが100%近かったが、その後フランス資本のシェアは縮小傾向にあり、これにスイス、米国、レバノンなどの進出が注目される。
 電力は、工業化の進展に伴って、その消費量が増大している。
 国内電力需要の約90%は、次の5つの水力発電所から供給されている。
 バンダマ河(Bandama)のカスー(Kassou)およびターボ(Taabo)ダム、ササンドラ河(Sassandra)のブーヨ(Buyo)ダム、ビア河(Bia)の2つの旧ダム。
 火力発電用の燃料の輸入は、輸入総額の12.3%(96年)を占めており、政府は輸入エネルギーへの依存度を軽減するため、国産天然ガスの開発を推進しつつある。
 なお、電力事業は1990年に民営化されている。

 

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