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1 海洋汚染の現状

(1) 海洋汚染の確認状況
 海上保安庁では、油、廃棄物、又は工場排水などによる海洋汚染を巡視船艇・航空機等によって自ら発見し、また海洋環境保全推進員、海事関係者や漁業関係者など海上保安庁以外の者からの通報を受けてこれを確認することにより、我が国周辺海域における海洋汚染の実態を把握している。 海上保安庁が、我が国周辺海域において確認した海洋汚染の発生状況は、次のとおりである。

(1) 発生確認件数の推移
 最近の我が国周辺海域における海洋汚染の発生確認件数は、第1図のとおりで、全体的には減少の傾向を示している。
 このような、海洋汚染の減少の傾向は、45年末のいわゆる公害国会以来一連の公害防止関係法令が逐次整備強化され、これらの法令に基づく各種の公害防止施策が講ぜられるとともに、公害問題に対する世論の高まりから関係者の公害防止意識も高まり、その効果が現れてきたものと考えられる。また、運輸省及び海上保安庁が、海事関係者などに対して、関係法令や汚染防止のための具体的な方策等についての指導を強力に推進してきたこと及び海上保安庁が巡視船艇・航空機等を効率的に運用して強力な監視取締りを実施してきたことが、海洋汚染の減少に大きく寄与しているものと考えられる。
 平成9年の海洋汚染の確認件数は、前年に比べ41件減少し、昭和48年に統計をとりはじめて以来、最少の件数となった。



第1図 汚染の発生確認件数の推移

この要因としては、廃棄物等の油以外の汚染の件数が大幅に減少したことによるものである。

(2) 種類別
 種類別にみると第1図に示すとおり、油によるものが最も多く、平成9年には405件と全体の約57%を占め、油以外の有害液体物質、廃棄物、工場排水等によるものが254件、約36%となっており、赤潮については54件の発生を確認している。

(3) 海域別
 海域別にみると、例年我が国周辺海域における海洋汚染の4割前後は、東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海の4海域において発生している。これらの海域は、人口の集中している大都市や臨海工業地帯をひかえ、また、船舶の交通量も他の海域に比べて多いことから、汚染発生の可能性の高い海域となっており、平成9年においても、第2図に示すとおり東京湾78件、伊勢湾29件、大阪湾33件、瀬戸内海(大阪湾を除く。)116件と、これらの海域だけで256件と全体の約36%を占めている。



第2図 海洋汚染の海域別発生確認件数(平成9年)

(注) 1.その他は、油以外のものによる汚染及び赤潮である。
2.数字は、件数を示す。                

 

 

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