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資料5 現行の規制とその問題点(昭和54年度報告書抜粋)



5.類別の異なる危険物の荷役量
                                (昭和54年度報告書抜粋)
(1) 現行の規制とその問題点
 現行の港則法によれば、類別の異なる危険物の荷役を行う場合、その荷役可能量を通達(保警安第66号昭和49年4月2日)によって、次のように定めている。 「2種類以上の危険物を荷役するときは、それぞれの危険物の数量を、それぞれの危険物の荷役許容量で除した商の和が1を越えない場合のそれぞれの危険物の数量とする」  この規制方法は、危険物の流通の多様化、大量化により、その流通を阻害しかねない情勢となってきた。危険物の流通阻害の実例として次のようなケースが起こっている。
a)一船積みで一種類の危険物の大量輸送が申し込まれる場合、これらは荷役許容量近くまで申し込まれることが多く、他の危険物はほとんど積めない。このような危険 物の例として次のものが報告されている。
・モノエチルアミン(引火性高圧ガス)
・硝酸アンモニア(酸化制物質)'
・液化石油ガス(引火性高圧ガス)
・過酸化水素(酸化性物質)
・ぎ酸(腐食性物質)
・殺虫殺菌剤類(毒物)
・ペイント類(中引火点引火性液体)
b) 荷役許容量の小さい危険物の場合
危険性が高いために許容量を小さく定めたものであるが、商の和の計算を行うとき、その占める比率が大きく、他の危険物が積めないことがある。
C) 積替(トランシップ)の危険物の場合
 主要航路のコンテナ化に伴い、積替のケースが増えている。コンテナ船よりC2岸壁に揚げ、B岸壁に運搬されて、在来船に積み込まれる場合、C2、B岸壁の荷役 許容量の差により在来船に全量積めないことがある。
d)腐食性物質はその種類が著しく増加しており、1船積みの件数が非常に多く、商の和の算出には繁雑をきわめる。

(2) 改定案の検討
 上記の実情を勘案して、現行の商の和による規制の妥当性につき検討が行われた。
「危険物船舶運送及び貯蔵規則」に定める危険物相互間の隔離規定は、船上における安全確保を目的に定められており、これを導入して商の和の規制をなくすべきであるとの 提案があったが、荷役作業中の安全性を重視し、事故時に周囲に及ぼす災害の局限を図ろうとする港則法の趣旨に添うためには、さらに十分な検討が必要であり、これは将来 の研究課題として残すこととした。商の和による規制は、過去の実績を勘案し、安全確保の面で有効であると考えられる。しかし、危険物の流通を阻害しかねない点があるの で、これを改善するため、何らかの考慮がなされなければならない。また、規制を広く 周知徹底させ、かつ遵守しやすくするためには、その簡素化が必要である。
 上記の二点を配慮し、危険物の特性についても考察の上、下記のように商の和の規制より一部類別を除いても安全の確保ができるということについて、一応の合意がなされた。
a) 港則法上もっとも警戒すべき災害は大規模な爆発、火災が発生し、近隣住民など多数の者が死傷し、或いは被災すること、若しくは有害ガス、放射能などが広く 拡散し、広い範囲の人々に障害が及んだりすることであろう。以上の危険性が比較的低いと考えられる毒物と腐食性物質は商の和の規制の対象より除いて、それ ぞれの荷役許容量まで荷役できることとしても安全の確保はできる。
b) 毒物、腐食性物質以外の類別は、大規模災害の危険性が比較的高く一時的に大量に取り扱われることが禁止されるべき危険物と考えられるので、従来とおり商の 和の規制を行う。
c) 毒物、腐食性物質でも、前記大規模災害の危険性を有するものがあり、改正作業が行われるならば、その時点でこれらも含め細部につき、更に検討する必要があ る。



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