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3.2 排出係数に関する実態調査

 

3.2.1 舶用機関製造業者の実地調査

IMO規制に対応するために、舶用メーカーでは機関のNOx濃度の測定データを計測しており、NOx排出率を計算している。このため、E3モードの測定点として定められた、25%、50%、75%、100%の各負荷点におけるNOx排出濃度および燃料消費量を計測している。

しかし、グローバルな排出量を考慮する場合には、E3サイクルでの重み付けを行うと部分負荷時の影響が大きすぎることも考えられ、通常の航海出力付近でのNOx排出量をベースにすることがより実態にあうと考えられた。

そこで、メーカーの2サイクル31機種、4サイクル34機種のテストベッドにおける測定値のうち100%および75%負荷におけるNOx排出量のみを図3.2-1に示した。定格回転数では68〜1420rpm、ボアでは180〜7800φまでの広範囲な機関を対象とした。対象となっている機関は一部IMO規制に合致するが、既存の機関データも含んでいる。測定点の数値のNOx濃度については、TechnicalCode(=ISO8178Part1)に記載のNOx濃度補正式を用い大気条件の補正を行った。

メーカー測定値はおおよそIMOの規制値の曲線上に分布しており、高負荷域においては、IMO規制値を近似値として用いることが妥当であると思われた。ただし、これらの値はテストベッドでのA重油での測定値であることに注意する必要がある。海上でのデータの蓄積はメーカー側にも少なく、過去においてもLloyd'sや(財)日本造船研究協会が調査を行っている程度である。

(財)日本造船研究協会では、平成6年度から平成8年度の3ヶ年にわたりSR224研究部会として実船排気ガス測定を実施している。同調査における陸上と海上のNOx排出係数の差異を図3.2-2に示した。SR224のデータは全般に今回収集のデータより高い値が多く、20g/kWh以上とIMO規制値を超えるものも少なくない。また、陸上と海上との比率を見ると、平均的には10%以上海上での排出率が高くなっていることが、読み取れる。

報文中でもNOx補正後の値でも、E3モード下での陸上と海上の差異は8.6%程度残るとしており、テストベッドでの値をそのままグローバルな排出係数に当てはめることは、過小評価となる危険性があると考えた。また、燃料の違いも存在し、IMOの議論では燃料の違いにより最大15%の誤差を認めることで議論が進んでいる。そこで、本調査では収集したテストベッドの値を10%増加させた値を海上におけるNOx排出係数とした。

 

 

 

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