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第3章 情報の可視化

 

3.1 INSROP GISの基本操作

 

3.1.1 はじめに

北極海航路(Northern Sea Route; NSR)は極東地域とヨーロッパを結ぶ最短航路であり、商業的航路として活用されるようになればその経済効果には計り知れないものがある。しかしながら、NSRの大部分は1年を通じて氷に覆われ、厳しい自然環境にある。航路の選定や船舟自の安全な運航のために、この海域の氷況、海象、気象等の情報をデータベースとして整理しておくことは極めて重要である。1993年よりノルウェーのフリチョフ・ナンセン研究所(Fridtjof Nansen Institute : FNI)、ロシアの中央船舶海洋設計研究所(Central Marine Research and Design Institute : CNIIMF)、及び当財団の3機関を中核とし、北極海航路調査を目的とした「国際北極海航路計画」(INSROP : International Northern Sea Route Program)が実施されてきた。INSROP GIS(Geographic Information System)はその一環として開発され、NSRに係わる自然環境、港湾の状況、航行支援施設、生態系、インフラストラクチャー等の種々の情報が体系的に整理され、INSROPの成果を収めたデータベースとしてとして位置付けられている。

今回、国内のNSR調査研究に役立てるために、INSROP GISをわが国に導入してシステムの内容と機能について調査し、活用ガイドと操作マニュアルとしてまとめた。

本章では、INSROP GISのシステム構成、データ構成、カスタマイズされた機能について解説し、氷の分布状況や海象等、標準で準備されている代表的な解析例を示した。また、解析機能の応用例としてNSRに沿った自然環境データの複合解析の一例についても紹介する。

なお、本システムの活用や操作の詳細については、別冊の「INSROP GIS活用ガイド」と「INSROP GIS操作マニュアル」を参照されたい。

 

3.1.2 INSROP GISについて

(1) システム構築の狙い

システム構築の主な狙いは以下の通りである。

1] 北極地域・海域の開発及び利用計画の策定や、北極海ルートに沿った商業航路の決定・選定などをする際、北極域の研究・ビジネスに携わっている産・官・学関係者にとって、容易に活用出来るこの地域の情報システムの整備が望まれている。

2] 一方、広大な領域で多岐に亘ったトピックスの情報選択に当たり、質の高い意志決定が出来る情報としては、地図や写真を活用した地理情報システム(GIS)が有効である。

3] INSROP GISは、以上の観点からNSR地域及び北極海の地理データを可視化し、その検索、解析等を容易に行える様にして、ユーザーに体系化されたINSROP情報に容易にアクセスできるように構築されたシステムである。

4] INSROP GISは、NSR及び北極海域の開発に関する利用を中心に考えて開発されたソフトウェア・コンセプトであるが、INSROPの基本理念から商業製品では無い。

 

 

 

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