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(1)アイドリング時を想定した100℃での恒温吸着試験

(2)出港時を想定した100℃からの昇温吸着試験

 

ゼオライト、Ba-Cu-O、Mn-Zr-Oを調製し、NOxの吸着試験を行った結果、これらの中では2種類の試験結果両方ともにMn-Zr-Oが水蒸気存在下で高SV条件下においてもほとんど吸着阻害を受けず、最も高いNOxの吸着量を示した。

排ガス中のNOxの除去が容易でないのは、SOx、O2、H2Oなどの阻害物質を含んだ多量の共存ガス中の希薄なNOxの処理が困難である事に起因する場合が多い。したがって、何らかの比較的簡単な分離法により共存ガスからNOxを分離濃縮できれば、現在確立しているアンモニア脱硝、NO直接分解、炭化水素による選択還元、さらには三元触媒のいずれと組み合わせても容易にNOx浄化が可能になる。

本研究のようにNOxの吸収を利用した新しい触媒システムの開発を行うことで、特にエンジンの始動時に排出される有害物質の大幅な低減が可能になると考えられる。また、本触媒システムは他のNOx排出源への適用も可能であり、新しいNOx除去技術の開発にとっても有用な知見を得ることができた。

 

6.2 まとめ

 

本調査研究の結果から当初目的である排ガス温度が低い時に有効に働くNOxの吸着剤としては、マンガン-ジルコニア複合酸化物が高いNO吸着能を示すことが検証できた。これらの吸着能は理想的な条件下では充分実用に耐えうる範囲であるが、船舶に搭載して実排ガスの処理をすることを考慮すると、共存ガスの影響についてさらに詳細な検討を行うことが不可欠である。共存ガスの中でも特に水蒸気による吸着阻害は、NOの吸着および選択還元除去に共通して本質的な開発課題である。 このためH2Oによる吸着阻害について検討を行い、マンガン-ジルコニア複合酸化物はH2Oの阻害を受けず高いNO吸着能を示すことを明らかにした。しかし、今後SOx等の共存ガスについて実排ガスを用いた試験が不可欠である。

また、本研究はアンモニア選択還元触媒と併用することを前提に行ってきた。しかし、アンモニア選択還元脱硝法は技術的に最も確立されたプロセスではあるが、多くの課題も残されている。また、近年ディーゼルエンジン排ガス、コジェネレーション排ガスなどのクリーン化技術の早急な確立が求められており、アンモニアに変わる新しい還元剤、新プロセス・新触媒の開発が必要となっている。

 

 

 

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