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第5章 触媒システムの検討

 

5.1 はじめに

 

これまでに行われているいくつかの研究事例から、従来型のアンモニアあるいは尿素法SCRシステムは、課題は残るものの、排気ガスの温度が充分に高くなったときには有効に作動し、90%近いNOxの除去が可能であることがわかっている。したがって、当面問題となるのは、出港時の触媒温度が低い領域で排出されるNOxである。そこで本調査研究では、従来型の脱硝触媒の問題点である出港時に排出される窒素酸化物の浄化を目的として、「吸着剤-選択還元触媒」の複合化による新しい脱硝触媒システムの検討を行ってきた。低温時に排出されるNOxを一時的に吸着しうる吸着剤が開発されれば、高温時には従来型の脱硝触媒で対応可能であると考えられる。したがって従来型の脱硝触媒と組み合わせての使用を前提として、種々の吸着剤のNO吸着特性の試験を行った。システム全体イメージを図5.1-1に示した。

その結果、当初目的である排ガス温度が低い時に有効に働くNOxの吸着剤としては、マンガン-ジルコニア複合酸化物が高いNO吸着能を示すことが検証できた。しかし、理想的な条件下ではこれらの吸着能は充分実用に耐えうる範囲であるが、船舶に搭載して実排ガスの処理をすることを考慮すると、種々の開発課題が残る。これらについて以下に検討し、実船搭載に向けての課題抽出を行った。

 

5.2 システムとしての課題点の抽出

 

(1)アンモニア-SCR法の課題点

前述したように、アンモニア-SCR法を船舶に適用した場合、脱硝装置を煙突内に設置することを考慮すると、装置容積が問題となる。容積は陸上の固定発生源では特に問題にはならないが、船内という限られたスペースの場合には非常に大きな問題である。実船への搭載例が既にあることから、舶用として不可能でははないが、本調査研究で調査した事例では、装置本体を設置するため、煙突部が通常の船舶に比べ1.5倍程度の大きさになっていることから、実用化に向けてはさらにシステムをコンパクトにする必要があると思われる。

また、アンモニアは非常に有害な物質であるため、船内での取扱いには十分注意する必要がある。また、燃料中の重油には通常多量の硫黄分が含まれているため、未反応アンモニアが低温で硫安あるいは酸性硫安を生成し、配管系のの腐食あるいは通気抵抗の増大の原因となる。このような観点で、アンモニア系以外の代替還元剤や新規脱硝技術の開発が必要である。現状ではアンモニアと同等の還元性能を示す尿素を用いた選択還元が主に検討されている。

 

 

 

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