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3.9 その他

その他の調査結果として、冷凍機直冷式超電導マグネットの開発状況について報告する。

液体ヘリウムを全く使用せずに冷凍機のみで直接超電導コイルを冷却する冷凍機直冷式方式の超電導マグネットは、1983年にMITのM.O.HoenigによりNb3Sn超電導線を2段式冷凍機により13Kに冷却し3.3Tの磁界を発生するシステムの概念設計が示された(図3.9.1)[1]。その後1980年代後半に高温超電導パワーリードによる熱侵入量の低減、磁性蓄冷材による冷凍効率と到達温度の向上と言った技術的なブレイクスルーにより、日本大学のグループによりNb3Sn超電導線を用いた14K運転の冷凍機直冷式超電導マグネット、さらに4K冷凍機と組合せによりNbTi超電導線を用いた超電導マグネットが開発された。現在製作されている冷凍機直冷式超電導マグネットでは、超電導線としてNbTi超電導線を用いたものが中心で、高磁界用などにNb3Sn超電導線を用いたり、NbTiとNb3Snのハイブリット構造としているものがある[2]。また、Bi系高温超電導線は液体窒素温度77Kでは臨界電流密度が低く、高磁界を発生できないが、30Kから20Kまで冷却すると超電導特性が向上するため、Bi高温超電導線による冷凍機直冷式超電導マグネットも開発されており、例えば、住友電工では表3.9.1、図3.9.2のように銀シースび2223系超電導体を使った4Tや7Tの超電導マグネットを開発している[3]。しかし、鉛を蓄冷材とする冷凍機で10Kまでの冷却が容易に行える現状では、Nb3Snコイルに対する高温超電導コイルのメリットは少なく、コストや歪みに対する特性低下など改善が必要である。液体窒素温度での超電導特性が向上すれば、低消費電力の小型冷凍機の使用が可能となり、よりコンパクトな冷凍機直冷式超電導マグネットの開発につながると期待されている[1]

冷凍機直冷式超電導マグネットの開発は、ここ数年で積極的に進められており、国内のメーカーでは、東芝、住友重機械、神戸製鋼、住友電工など、国外でもOXFORDなどにより製品化され、当初は大学などの研究機関での使用が多かったが、近年では図3.9.3のように単結晶引き上げ装置などとして産業分野でも使用されている[4]

最近の開発状況は、さらに利用できる室温ボアの大口径化、発生磁界の高磁界化、使用用途に合わせたスプリット化、高速励磁化が進められ、それぞれの達成値が向上している。そこで、1998年秋季低温工学・超電導学会で発表された冷凍機直冷式超電導マグネットに関する主な報告を示す。

 

 

 

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