日本財団 図書館


3.4.2 電流リード

超電導磁石に励磁電源から電流供給するためには、常温部と超電導コイルを連結する電流リードが必要である。電流リードの設計においては、通電電流によるジュール熱を小さくすること、および熱伝導による極低温部への熱負荷を小さくすることが重要である。電流リードから極低温部への熱負荷を軽減するために、(ア)断面積変化型電流リード、(イ)着脱型電流リード、(ウ)超電導材を用いた電流リード、などが開発されている。また、電流リードのの冷却方法としては、(i)端部を冷媒の蒸発潜熱で冷却する、(ii)冷媒ガスを電流リードに沿って流通させ顕熱で冷却する、(iii)端部を冷凍機で冷却する、などがある[1]

着脱型電流リードの例として、中国で製作された電磁推進船用超電導磁石の1000A級電流リードがある[2]。これは、外径30mm内径24mmの外側パイプと外径17mm内径9mmの内側パイプを組み合わせた同軸構造であり、長さは1000mmである。試験されたV-I特性は、図3.4.12のようである。

高温超電導材をヘリウムガスにより冷却する方式の電流リードの例として、BSCCO(2212)バルクのシリンダー型のものが1kWh/1MWのSMESシステム用として開発された[3]。これは図3.4.13および図3.4.14に示すような装置で性能試験が行われ、冷却ガス流量0.05g/sで1kAを通電したときの熱負荷は0.035Wであった。

高温超電導材を真空中に設置し、端部を液体ヘリウムおよび液体窒素で冷却する方式で12.5kAを通電する電流リードの試験結果が発表されている[4]。これは、Large Hadron colliderで必要とされる3400kA電流リードの開発プログラムの一環として行われたもので、従来の常電導材を用いたガス冷却型電流リードの低温端に対する熱負荷を約1/10(1.3W/12.5kA)に軽減することが目標とされた。図3.4.15のような装置で、7サンプルの試験が行われ、その中の1つは最大通電電流が13kAに到達した。しかし、並列シャントからの熱負荷を含めた総熱負荷が最低値で1.49W/12.5kAであり目標値に到達していないこと、および接続部の発熱が大きいことなど今後の課題になる試験結果もあった。

YBCOを用いた電流リードを伝導冷却型Nb3Sn超電導磁石に採用した例を図3.4.16に示す[5]。電流リードは真空中に配置され、冷凍機からの伝導で10K-50Kに冷却される。この電流リードによる熱負荷は100A通電時0.25Wであり、従来のOFHC銅リードで最適化した場合の1.25Wより小さい。

 

[1]低温工学協会、「超伝導・低温工学ハンドブック」、オーム社、pp.627-630, 1993

[2]Yunja Yu, et al, "A superconducting magnet system for MHD propulsion research", IEEE Trans. Appl.Supercond. Vol.7 No.2, pp.509-512 (1997)

[3]T.Bohno, et al, "Development of HTS current leads for 1kWh/1MW module type SMESsystem(2)-Manufacturing and testing of prototype leads-", IEEE Trans. Appl. Supercond. Vol.7 No.2, pp.688-691 (1997)

[4]M.Teng, et al, "Evaluation of HTS samples for 12.5 kA current leads", Inst. Phys. Conf. Ser. No.158 pp.1203-1206 (1997)

[5]Kenneth G. et al, "A cryogen-free superconducting magnet for Maglev applications: design and test results", IEEE Trans. Appl. Supercond. Vol.5 No.2, pp.961-963 (1995)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION