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3.4 超電導磁石の付帯機器の開発状況

 

3.4.1 永久電流スイッチ

超電導コイルの励磁は一般に直流電源を接続し、その電源の制御により通電電流を増減する。励磁した超電導コイルに一定電流を通電する場合には、励磁した超電導コイルの端子間を短絡すれば、電源を超電導コイルから切り離しても電流が流れ続け、しかも安定した電流とすることができる。この超電導コイルの端子間を電気的に短絡したり切り離したりするためのスイッチが永久電流スイッチである。

永久電流スイッチを動作方式で分類すると、接点の接触・乖離を利用する機械式永久電流スイッチ、および超電導体の常電導・超電導転移を利用する超電導式永久電流スイッチがある。前者は、オフで接点が乖離しているとき無限大の抵抗になり電圧が加えられてもジュール損がないという利点があるが、オンで接点が接触しているときにその接触抵抗により超電導コイルの電流減衰が比較的大きくなるという欠点がある。後者は、オンにおける抵抗がゼロであり、また、可動部がなくオンオフの繰り返しによる劣化がないという利点があるが、オフにおける抵抗が有限であり励消磁が頻繁に行われる場合にそれに伴う発熱量が問題になる。後者はさらに、常電導・超電導転移を温度制御により行わせる熱式永久電流スイッチ、磁界制御により行わせる磁界式永久電流スイッチ、および電流制御により行わせる(電流式)永久電流スイッチに区別できる。

これまでにMRI用超電導磁石などで実用化された永久電流スイッチは、構成が単純で小形軽量であり操作も容易な熱式永久電流スイッチが主流である。超電導電磁推進船の超電導磁石用としても、ヤマト1で採用したものおよびその後に開発したものなどこの熱式永久電流スイッチである。熱式永久電流スイッチの開発例として、Nb3Sn超電導線を採用した1kA-20Ω級永久電流スイッチおよび3kA-6Ω級永久電流スイッチの試作例があり、表3.4.1、表3.4.2および図3.4.1〜図3.4.3にそれらの形状および諸元を示す[1]。これらは、将来の超電導電磁推進船用10kA級永久電流スイッチを開発するための基礎研究用として試作されたものであり、いずれも(a)単一素子構成による軽量・小形化、(b)耐振性を考慮したリード補強、(c)設計オフ抵抗が10W(1kA-20Ω級)および30W(3kA-6Ω級)で得られる熱絶縁、を特徴としている。熱絶縁の設計では、温度の上昇下降に伴い構成材料の比熱および熱伝導率も増減することを考慮し、有限要素法による熱伝導の計算機シミュレーションを行った。性能試験では、通電容量およびオフ抵抗の測定と共に船舶が航行するときの動揺を考慮した振動試験(5〜33Hz、振幅1mmp-p)が行われ、安定な通電性能およびほぼ設計どおりのオフ抵抗測定値が得られた。さらに、これらの設計および試験データを基に10kA級Nb3Sn永久電流スイッチの設計も行われている[2]

 

 

 

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