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3.3.3 コイル押さえ

超電導コイルを支持する機構には、超電導磁石による大きな電磁力に耐えうる構造であること、室温領域から低温領域への熱侵入を極力抑えること、超電導磁石を冷却したり、昇温したりするときに生じる熱ひずみを吸収することの3点が一般的に求められる。超電導コイルは、大型化、高磁界化の両面で進められているので、支持材に対する検討もますます重要になってきている。超電導コイルの支持材料としては、ステンレス鋼とFRPの2つが主に挙げられる。

(1)ステンレス鋼

ステンレス鋼は、非磁性体であり、かつ、比較的容易に溶接ができることから、超電導コイルの支持材として用いられている。核融合科学研究所で建設された大型ヘリカル装置の場合、超電導コイルにかかる電磁力は、1mあたり1000トン以上となっており、この電磁力にたいしても、コイル変形が3.4mm以下に抑えるような支持材料として、オーステナイト系ステンレス鋼SUS314が用いられている。このステンレス鋼に含まれる炭素、及び窒素の量により、降伏強度と電子ビーム溶接が可能な板厚が変化するため、この大型ヘリカルコイルでは、鋼中の炭素の濃度は0.04〜0.05mass%、窒素の濃度は0.055〜0.08mass%と決められた。また、FEMによる支持体の構造計算もなされている。支持体の組立にあたって多くの箇所に電子ビーム溶接が採用されたのは、組立精度を確保するために熱ひずみの小さい溶接方法を選択したためであり、溶接の順番も熱ひずみが小さくなるように考慮された順番で施工されている(図3.3.30)[1]

(2)FRP

FRPは、電気絶縁性がよいこと、熱伝導率が低いことなどの特徴を持つことから、超電導コイルの支持材として用いられる。一般的に知られている材料はG-10と呼ばれるGFRPである。最近では、G-10の極低温における諸特性を改善したG-10CRというGFRPが出てきており、これらの層間せん断強度の測定なども行われている[2]。先に挙げた大型ヘリカル装置の例では、50K以下の場合、CFRPの方がGFRPよりもさらに熱伝導率が低いという特徴から、低温部分の装置全体を支持する支持脚の一部にCFRPが用いられている。この支持脚は、低い高さで断熱距離を稼ぎ、さらには、熱ひずみを吸収させる構造とするために、図3.3.31のような折り曲げ構造となっている[1]。もう1つの例としては、Bi系高温超電導パワーリードへの適用例がある[3]。Bi系高温超電導体をはじめとするセラミックス系の超電導体は、機械的強度が弱いため、高磁場中で使用するためには、その電磁力に耐えるための補強材を必要とする。このパワーリードの補強材としてFRPが適用された理由は、(1)熱伝導率が低いこと、(2)Bi系高温超電導体の熱膨張率とFRPの熱膨張率が比較的近いこと(図3.3.32)、などによる。この試作例においては、往復導体1組の電流リード当たり、0.3W/kAの熱浸入量を達成した。また、20回にわたる室温から液体窒素温度(77K)までの熱サイクルによっても、臨界電流及び接続抵抗には性能低下が見られておらず、高温超電導体の補強材としてFRPを採用した成功例であるといえる。

 

 

 

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