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3.3 超電導磁石の開発状況

 

3.3.1 線材

高Tcの銅酸化物超電導体の発見以来その線材化の努力が精力的に進められている。これまでにBi系でほぼ実用領域の長尺線が製作されるようになり、Y系においても気相反応法での開発によりmクラスの超電導線が製作されている。一方、低Tcの金属系においてもNbTi超電導線での人工ピン導入やNb3Sn超電導線およびNb3Al超電導線の改良など、超電導線については広範囲な開発が進められている。

(1)人工ピン導入型NbTi超電導線

人工ピン導入型NbTi超電導線について、ピンの材質をNbまたはTiとしたそれぞれの場合の臨界電流密度が図3.3.1のように示されている。これらの電流密度と磁気相図との関連が検討され、混合状態における渦糸状態の違いが臨界電流密度の高磁場特性に影響している可能性があると指摘された[1]

(2)Nb3Sn超電導線

米国、ロシア、欧州、日本の国際協力による国際熱核融合実験炉(ITER)計画において、高磁界電流密度、低交流損失、低超電導直上抵抗を併せ持つ長尺のNb3Sn超電導素線の研究開発および量産実証計画が進められ、日本においてはブロンズ法および内部拡散法によるNb3Sn超電導素線が中心ソレノイドコイル用として開発された[2]。開発の一例として、Ta添加型ブロンズ法Nb3Sn素線の諸元および断面図をそれぞれ表3.3.1および図3.3.2に示す。これは臨界電流密度を向上させるためにブロンズマトリクスへのTi添加、NbフィラメントへのTa添加、およびブロンズの高Sn濃度化がおこなわれ、ヒステリシス損失低減のためにフィラメント間距離の最適化が図られた[3]。別の開発例としては、フィラメントの異常変形を抑制し、フィランメント径やフィラメント周囲のブロンズ量の適正化を図った図3.3.3のような断面構造のブロンズ法Nb3Sn素線が開発されている[4]。また、図3.3.4に示すような断面構造の内部拡散法Nb3Sn超電導素線で、Snコアを従来より細径化しヒステリシス損失の低減を図ったものも開発された[5]。以上のITER用Nb3Sn超電導素線の臨界電流密度(at12T)およびヒステリシス損失は図3.3.5のようであり、いずれも目標の550A/mm2(at12T)以上および200mJ/cm3(for±3T)以下となっている。なお、米国、ロシア、欧州、日本で開発されたITER用Nb3Sn超電導素線のB-Jc特性およびヒステリシス損失を比較すると図3.3.6のようである。

Nb3Sn超電導線の冷凍機冷却超電導磁石への応用例として、励消磁時のACロス抑制を考慮しフィラメント径4.3μmのNb3Sn超電導線を採用した15T超電導磁石が開発されている[6]。このNb3Sn超電導線はブロンズ法で製作され、表3.3.2のような諸元となっている。これは伝導冷却されるため、図3.3.7に示すように4.2K〜11Kの範囲でIc-B-T特性が測定された。

 

 

 

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