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3. 超電導電磁推進装置の高出力化に関する調査研究

 

3.1 概要

超電導電磁推進船「ヤマト 1」の海上航走実験の成功により、超電導電磁推進装置が船舶の推進装置として使用できることが実証されたが、その実用化のためには超電導電磁推進装置の高出力化が必要である。

そこで、平成6年度から「超電導電磁推進装置の高出力化に関する調査研究」事業を実施してきた。

平成6年度は、「ヤマト 1」で用いられた超電導磁石の約4倍の磁界をもつ「中心磁界15T、常温ボア径300mm」の鞍型ダイポール超電導磁石の概念設計を行うとともに、永久電流スイッチ、電流リード、ヘリウム冷凍機等の検討を行い、高出力化に伴う課題の抽出を行った。[1]

平成7年度からは、これらの課題のうち特に重要な高磁界超電導コイルおよび大電流永久電流スイッチの開発に取組んだ。

「ヤマト 1」の超電導コイルには加工性が良く実績が豊富な合金系のNbTi線材が用いられたが、10Tを超える高磁界コイルには現在のところ化合物系のNb3Sn線材などを用いる必要がある。しかしながら、Nb3Snはコイルを製作する際の歪みなどによって性能が劣化する傾向がある。このため、性能が劣化する原因を究明し、Nb3Snコイルの性能向上を図ることを目的に、高エネルギー加速器研究機構と共同で「Nb3Sn巻線技術の開発」を行うことにした。

また、「ヤマト 1」の永久電流スイッチには加工性の良いNbTi線材が用いられたが、臨界温度が低いため外部からの熱侵入によって常電導に転移するクエンチ現象がみられた。そこで臨界温度の高いNb3Snを用いた安定性の高い大電流永久電流スイッチの開発を行うことを目的に「Nb3Sn永久電流スイッチの開発」を行うことにした。

平成7年度は、「巻線技術の開発」では巻線条件が変えられるコイル巻線機の開発を行った。また「永久電流スイッチの開発」ではその第一段階としてNb3Snを用いた小型で軽量な1000A級永久電流スイッチの開発を行った。[2]

平成8年度は、「巻線技術の開発」では巻線機を用いた巻線方法の開発を行うとともにNb3Sn線材の製作を行った。また「永久電流スイッチの開発」では1000A級永久電流スイッチのデータを基に3000A級永久電流スイッチの開発を行った。[3]

平成9年度は、「巻線技術の開発」ではNb3Snコイルの試作を行いクエンチ時の基礎データなどを取得するとともに、試験用コイル製作のためのエポキシ樹脂含浸装置の製作やエンドパーツなどの巻線治具の製作を行った。また「永久電流スイッチの開発」では3000A級永久電流スイッチのデータを基に10000A級永久電流スイッチの概念設計を行い、Nb3Sn線材を用いた安定性の高い大電流永久電流スイッチの開発の見通しを得た。[4]

 

 

 

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