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しかし黄河の河口流域であり、最も使用量の多い山東省が水を引きすぎるのが、黄河の問題を引き起こす主な要因であると主張するものもいる。加えて、水量が減少したときに備えて水を引いて貯水する地方では、この習慣が水量の減少を加速させるという一種の悪循環に陥りつつあるようだ。

黄河流域の上流・下流間の紛争は、ある程度、平等と効率の問題である。上流の各省は貧しい地域であることが多く、低価値の穀物に水を与えるために、かなりの補助価格がでている水を大量に使用し、同時に土壌の塩害問題を悪化させている。下流にある各省は改革後の経済ブームの恩恵を受けており、高価な作物や農業以外の目的に水を使用している。またこれらの地域では高額な水料金を支払っているが、それでも全体のコストはカバーしきれていない。

流量の減少に向けた対策案には、より合理的な価格設定、水使用の節約促進、上流のダム管理規則の変更、流域全体での管理方法の改善、長江からの水の引用、河流外でのダムの増加、地表水と地下水の混合使用の促進などが含まれる。これらの解決策はどれも簡単ではないだろう。これは主に、自然環境とその他の代替的な水使用の変化に対応して、中国が適切な価格制度と特権制度を開発できるかどうかにかかっている。

 

4. 水不足の都市

 

中国にある600の都市のうち、約3分の2が水不足と見なされている。このうち100を超える都市が「深刻な」水不足に悩んでいる(1997年に発表されたデータ)。また、大都市ほど影響を受けている。1990年には、人口が10万人を超える都市61のうち51が水不足であった。地域的には、北部の都市と、海岸沿いで小規模な流域にある急成長を遂げた都市が、最も影響を受けがちである。

都市部での水不足は、主に水供給プロジェクトが都市の成長に追いつけないことが原因である。つまり、地域の水需要が供給能力を超えているのである。いくつかの都市、特に長江下游の都市では、主に都市排水と産業排水による水資源の汚染が原因で水不足となっている。このような都市は189の水不足の都市のうち109の42%、38%、6%を占め、残りの水不足は複合的な原因によるものである。(10)

 

 

 

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