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中国とインドでは、使用される水の4分の3以上が、約5,000万ヘクタール近くの灌漑用地に供給されている。両国で生産される穀物もだいたい同じで、穀物生産量の約40%をコメが占めている(違いは中国の生産量がインドのほぼ2倍という点である)。どちらの国も、1970年以降、北部の小麦栽培地帯にモータのついているポンプ井戸(機井)が設置されたことにより、灌漑面積が大幅に増加した(中国では河北、山東、河南省、インドではパンジャブ州)。(6)

中国とインドでは、人口の3分の2が依然として村落に居住している。これはつまり、都市化による色々逼迫が、21世紀を待たずに起こるだろうということである。現在、およそ10人に1人が大都市に居住している。都市圏の人口が先例のないほど膨れあがり、経済生産が増加すれば、非農業部門の水需要が増加する。すでに、都市のインフラは既存の水供給と処理の需要に追いつくのが困難になっている。

 

2.今後の部門別の使用量

 

中国における将来の未使用については、異なる推定がいくつもある。表2に中国水利部の陳家寄氏による、1990年の実際の水使用の内訳と、2000年、2010年、2030年の予想使用量を示す。これは3つの主要部門である農業、産業、生活ごとに示してある。「農業」は穀物のための灌漑にのみ供給されうる量を示し、これは需要を9〜16%下回るものと仮定している。飲料水や家畜・放牧・農村の産業用など、村落でのその他の水使用はこれには含まれない。産業では、その合計の約半分を占める火力発電を含む。しかし火力発電は将来減少するものと予想されている。

陳氏の予測では、中国では少なくとも2030年まで、灌漑用が水使用の大半を占めるものと予想され、それ以降は産業での使用がほぼ同量になると見られている。しかし2030年以降も農業の水使用が5,000億立方メートルで、産業は2,000億立方メートルで安定するとの見方もある。水の総使用量は2070年代に、水資源総量の約4分の1を使用して8,000億立方メートルでピークに達するものと考えられている(図1参照)。こうしたおおよその推定は、2つの重要な仮定に基づいている。水資源使用の効率が農業・産業分野でともに改善され続けることと、人口が2050年前後で安定することである。(7)

このような楽観的ではあるが現実的な仮定は、少なくとも量的には、中国全体としては水資源が開発を妨げる重大な要因にはなりそうもないことを示している。しかし、必要とされる品質の水の需要と供給に大きな開きのある地方では、状況は違ってくるだろう。次にそのような場合をみてみよう。

 

 

 

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