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また、総人口の規模が大きいため、中国の高齢人口の数量も膨大なものである。国連の同中位推計によると、65歳以上の高齢人口は2000年には8,550万人に、2020年には1億5,647万人、さらに、2030年には2億1,596万人に達することが予想される。このような膨大な数量に昇る高齢人口は医療、保健及び介護等において社会に多くの課題をつきつけてくることはほぼ間違いないことであろう。

人口抑制政策を実施してきた中国では、出生率がすでに低下しており、「計画生育」という基本国策のもとで、今後も引き続き人口増加を抑制していくことになるため、人口の年齢構造に大きな変化をもたらすほど出生率が上昇することは考えにくい。その結果、過去に引き続いて今後も低出生率が続けば、遠くない将来に急激な人口高齢化が訪れてくることは必至である。人口高齢化にともなって、医療、年金等の社会保障制度の整備が至急の課題となる。人口の急速な高齢化は社会、経済の発展にも強いインパクトを与えるようになる。将来に予想される人口高齢化はまた将来の人口政策の再考をも促しかねない。

中国は低い経済水準のもとで急激な高齢化社会を迎えることになる。現在中国全体では、約8割の高齢者は年金がなく、高齢者の社会保障は一部の高齢人口に限られている。中国老齢科学研究センターが1991年に行なって調査によれば、都市では72.9%の高齢者が年金をもらっているのに対し、農村ではわずか5.7%の高齢者が年金をもらっている。現在、中国の都市、農村の高齢者の実際生活水準は低く、また都市と農村、年齢、性別の間に大きな格差が存在している。また、多くの高齢者が家族によって扶養されているのが実態である。中国の現状からして、短期間では国家が高齢者の扶養問題を解決することが不可能であるが、社会経済の発展につれ、社会が年金基金を増加させ、社会保障制度を確立していくことが求められている。

中国では1995年に、社会の統一計画と個人口座を結び付ける方法で年金保険制度を実施していく方針を正式に打ち出している。基本年金保険に加入した勤労者は全員個人口座を開設し、個人の納付する保険料は個人口座に記入され、企業の納付する保険料の一部分も個人口座に記入される。企業の納付した保険料の一部分は社会の統一基金として、退職者の年金を支払う。そして、今世紀末までに、各種企業の勤労者及び自営業者に適応でき、年金保険範囲と資金源を拡大させ、多種類の年金保険制度を実施し、勤労者基本年金保険、企業補足年金保険、社会統一計画と個人口座を結び付ける総合的な年金保険システムを確立していくことが目標となっている。

 

 

 

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