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まえがき

 

最近、相次いで報道される集団感染・院内感染事例は、国内において「結核」に注目を集めています。1997年の患者発生は、結核登録が始まって以来初めて上昇に転じるなど、「再興感染症」としての結核に今こそ積極的に取り組まなければならない時期にきています。

世界では、毎年発生する患者が800万人、死亡は300万人と推定され、その多くは特に発展途上国で起こり、大きな負担を強いています。

世界の結核対策は、95%の治癒率を達成できると証明されているWHOが推奨したDOTS (Directly Observed Treatment, Short-Course、直接監視下短期化学療法)戦略が主流です。そして、特に「結核高負担国」と呼ばれる22カ国(全推定患者数の80%を占める)におけるDOTSの普及が急務となっています。

国際社会である現代、私たちには、結核の問題を地球規模の問題としてとらえ、共に考え、協力して解決していくことが必要と思われます。世界には私たちが学べることも多く、また協力できることも多いのです。

本会では、平成5年に日本財団の援助をいただき、WHO(世界保健機関)と共催でアジア地域の結核対策担当者を東京に集め、「アジア太平洋結核対策推進会議」を開催し、最新の結核対策パッケージを地域に普及することに努めました。以後、同様に援助を得て、国または地域レベルの結核対策の推進に協力してきました。

平成10年度は、このような協力を続けてきたモンゴルにおいて、対策実施に欠かせない政府の積極的な協力を得ることを主な目的とした研修会を開催し、また、世界の結核専門家が集うIUATLD(国際結核肺疾患予防連合)の学術会議の機会に、若手専門家の育成を目的とした研修会を開催しました。

これらの研修会の成果が実を結び、世界の結核対策の推進に貢献できることを願っています。

 

平成11年3月

財団法人結核予防会

理事長 青木 正和

 

 

 

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