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表紙絵から

 

 

池田げんえい/1946年神奈川県生まれ。日本児童出版家連盟、現代児童会会員。創作『鬼の会」同人。日本デザイナー学院講師。はり絵作家。

 

● 平成・東海道五拾三次

その37「赤阪」

 

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大橋屋外観と内部。奥の白衣が若主人。

 

−名電赤坂駅−

土地の人に教えられた御油松並木を抜けてしばらくするとサイレンが鳴った。このあたりは正午の合図はサイレンらしい。なんとものどかでうれしく思いつつ、ふと左を見ると「大橋屋」の屋号の旅籠があるではないか。御油宿から歩いて20分、いや15分だったかもしれない。なんとなんと、もう赤阪宿に着いてしまった。もう少し足を伸ばそうとする客を強引に食い止めようとしていたのが御油の図だったのだ。そして赤阪の図は53次中、唯一家の中の絵、それが大橋屋である。ボクは「たのもう」といった心境で、小さく「ゴメンください」と中に入った。ボクと同年輩のご主人が機嫌よく出迎えてくれた。主人いわく、二階から中庭を見降ろした図とのこと、残念ながらずい分前に取り壊してしまって今はその面影もない。

 

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名電

 

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安藤広重絵「赤阪」

 

中庭に、蘇鉄が植え込まれている宿場。宿の女がお膳を運んできているが、そろそろ夕飯時か。右側の部屋では、二人の女が化粧に余念がない。イキイキとした生活ぶりがうかがえる。

 

 

 

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