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3. 新たな観光資源としての遺跡発掘現場ツアー

 

既に述べたように今回の調査で2カ所の遺跡発掘現場(トルコ・カマン、シリア・パルミラ)を訪問でき、発掘に携わる専門家の方々から歴史を切り開いていくお話を伺えたことに強い感動を受けたが、この発掘現場探訪ツアーなるものは、工夫次第ではこれからの歴史観光ツアーに新しい頁を加えていく可能性を秘めていると考えられる。ただ、解決すべき課題が多く、それらは、

(1) 発掘現場責任者及び必要に応じて関係国の現場立ち入り許可

(2) 現場の受け入れ能力、対応能力

(3) 現場へのアクセス(交通手段)の解決

(4) 発掘現場が持つ世界史上のアピール度

(5) 関連旅行業界のツアー企画への協力

(6) ツアー参加者側は特定の団体で特に遺跡・歴史の知識吸収を大きな目的としていること。

等となろうか。

 

発掘現場は基本的には対外開放されておらず、関係者は遺跡や遺物の発掘、整理、調査、保存等に相当な神経と人員と予算を使っているはずであり、従って発掘関係者や限られた研究者の訪問に対応するのが精一杯で、沢山の部外者それも観光客が押し寄せるのには抵抗があり、現場関係者の賛同を得にくい状況であろう。とは言え、同じく歴史に興味を抱く見せる側と見る側が上手に協力していく中で解決の糸口が開けてこよう。例えば、発掘現場での視察は時間を限って1グループ15分間とし、現場のリアルな雰囲気を目で見て実体験する事をまず第一義とする。そしてその発掘現場から発掘された遺物、遺品等を今度は発掘現場横に展示室を設けるなり、博物館でじっくりと時間をかけて見物してもらうのも一つの解決方法であろう。こうした方法が今後定着していくことを望みたい。

数千年の歴史のなかに眠っていた古代都市や、遺跡が少しずつ掘り起こされてくるその現場に立ち会い、その歴史の重みと歴史上の意味合いについて熱心に語ってくれる説明者がいたならそれを聞く人々にまた来てみたいと言う気持ちを起こさせるに十分ではなかろうかと思われる。

日本では歴史や自然を学び社会生活や集団行動を経験させる意味での修学旅行があり、現在ではアジア地区はもとより欧米にまで足をのばす高等学校(特に私学)が多い。世界の歴史が新しく解き明かされる現場をみてくるのは良い勉強となろう。今回の調査現場に限らず、世界の歴史・遺跡で日本人の修学旅行生が熱心にメモを取る姿を想像してみたい。

 

 

 

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