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2. トルコ・シリアのシルクロード観光への提言

 

前項で述べたように今回の調査により、トルコ・シリア観光の現状と関係者の取り組みが把握できた。これをもとに、シルクロード観光の振興に向けた提言を行いたい。

 

(1) 観光関係者のシルクロード観光促進への意識向上

両国に共通して言えることだが、シルクロードを観光の対象としてとらえ、内外観光客を誘致しようと言う意識は希薄であるも考えるに、紀元前6千年のヒッタイトを含むギリシャ、ローマ以来の連綿と豊富な歴史・文化遺産の中でシルクロードの歴史は目立たなくなってしまっている。少なくとも両国観光省内では、「サマルカンド宣言」(1994年10月ウズベキスタンの首都サマルカンドで行われたWTO/UNESCO共催による「シルクロードプロジェクト会議」で採択された)に基づきシルクロード関係国が連携し観光開発・協力の意義を認識して積極的に参画していく体制が望まれる。そうした意味で今回、トルコ・シリア調査団が両国観光省を訪問し、主要関係者にシルクロード観光振興につき提言できたことは両国観光関係者にとり意識向上への糸口になろう。

 

(2) 観光振興施策

1] 官民の役割分担の確認

国を挙げて観光を促進していくためには、官民の役割を確認し、その上で両者協力の下に押し進めて行くべきであろう。官民がその能力に応じた施策を行って行くとすれば、

1) 政府の役割

WTO(世界観光機関)の場を利用したシルクロード沿道国とのジョイント・プロモーションを推進していくことが考えられる。現状では、シルクロードの資源を豊富に持ち、その国単独で外国人観光客を誘致していける国は殆どない。従って、ここは関係国がお互いに連携しあい協力できる為の環境整備をするのが政府の重要な役割となろう。

例えば、関係国間の陸路での出入国手続きの簡素化、ビザ取得の簡素化、共同プロモーションが重要な点である。

2) 民間の役割

一方、環境整備を受けて民間としては自国のシルクロード資源を絡めたッァ上のモデルコース作りを積極的に推進していくことが必要である。例えば、ヨルダン、レバノンさらに将来イランを含めたモデルコースを設定し、関係国で協力関係を推進できれば日本、韓国および今後浮上してくると予想される中国本土を含む中国圏からも、シルクロードというブランドイメージで観光客を勧誘できる。

2] マーケティングの推進

地理的にも歴史的にも西欧に近く、観光客の主流も西欧人に頼っているトルコ・シリアであり、欧米市場に向けた振興策に偏っている。従って日本を初めとする東アジア旅行市場向けの観光振興策が望まれる。具体的には、航空会社、ホテル、その他の旅行業界関係者とのタイアップにより日本を含む東アジアの旅行関係者をターゲットにしたファミリアライゼーションッアーの充実や、シリアについては早急に政府観光局等独自の観光振興機関を海外の主要マーケットに整備することが必要となろう。

 

 

 

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