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以上のようにシリアの観光分野における民間投資の果たす役割は大きく、1980年頃から約200〜300億シリアポンド程度の投資が行われたものと推定される。今後も拡大する観光分野への投資意欲は高く、SACTEでもシリア国内で国際級ホテルを近年中に5つ完成させる計画をもっている。

 

8. シリアの観光開発方針

 

(1) 観光政策の現状

観光省は、1972年に設置され、ほぼ同時期に全国観光開発計画(National Plan)の策定作業に着手した。同作業は約2年の期間を要し1974年に公表されている。この計画は全国を対象とし、目標年次2000年における全国的な観光客数の予測、宿泊施設の必要量などを設定しているが、具体的な開発計画については、ラタキアを中心とした地中海側の海洋性リゾート開発に主眼が置かれていた。しかし、本計画に基づく海洋性リゾート開発は殆ど進まず、観光省及び合弁会社によるホテル建設等は、この計画と余り関わりの無い形で、全国各地で少しずつ進められている。

一方、湾岸戦争終結後、中東和平の進展の動きに伴い、シリアヘの外国人観光客は順調に伸びており、これに対応する社会インフラ開発や教育を含む観光振興の遅れが目立ってきた。

こうした中、シリア政府からの要請で、日本政府は同国の総合観光開発計画調査の実施を決めた。1997年3月、国際協力事業団は日本側民間コンサルタントより構成される調査チームに調査を委託し、調査は1年余にわたりシリアと日本の両国において実施された。この中で、文化観光振興の観点から、ダマスカス、アレッポ、ホムス、ハマそして地中海沿岸地域を観光開発を推進する優先ゾーンとして選定し、目標年次2015年の開発計画を策定した。

 

(2) 今後の観光政策の課題

1] 観光開発、振興に関する基本政策と長期戦略の策定

2] 新5カ年計画等における国としての観光開発の重要性の位置づけ

3] 今後急激な増加が期待できる観光客数に対応したインフラ、施設の整備

4] 開発計画の整合、共同プロモーションなど官民一体となった観光開発、観光振興

5] 外国民間資本活用の更なる円滑化

6] 環境や地域開発を配慮した観光開発の推進

 

9. シリアの観光動向

 

(1) 観光客数の推移

シリアへの外国人観光客数は1988〜89年には約40万人であったが、以降顕著な伸びを示し1993年には70万人を突破した。89〜90年の低迷の原因の一つは、湾岸戦争(1989年90年)の勃発であったと考えられるが、戦争終結後は順調な増加を示している。。

1996年シリアは240万人の外国人観光客を受け入れた。アラブ人と非アラブ人を比べると、アラブからの観光客が若干おおい。アラブ内ではヨルダンとレバノンが圧倒的に多い(56%)。次に湾岸諸国が続く(12%)。

 

 

 

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