7. シリアの観光関係組織・制度
(1) 観光省の組織及び業務
観光省は、観光に関わる行政を統括する機関である。具体的な業務としては、観光政策・観光計画の立案、観光振興、国営ホテルの建設、ホテルの格付けとサービス基準の作成及び観光産業の人材育成等である。
観光省の組織は、大臣官房を含む本省の7部と地方支部局、プロジェクト実施委員会とホテル訓練委員会で構成されている。スタッフの数は約1,560人でこのうち600人がエンジニアである。(図4-9参照)
(2) 投資法及び税制
1991年5月、国内外のシリア人、アラブ人及び外国人の投資促進を目的として、新投資法が制定された。この投資法により認可された企業は以下の優遇措置を受けることができる。
1] 輸入資機材の免税
2] 法人所得税及び固定資産税の免除(生産開始後5〜7年間)
3] 外貨口座の開設及び利子取得の許可
投資許可取得の為には、投資家はまず関連する省庁宛投資申請を行い、この後、最高投資評議会(Supreme Investment Council)の承認を得て投資許可を取得する。
最高投資評議会は運輸大臣、経済貿易大臣、農業大臣、国家計画大臣等8省の大臣及び2人の副議長と議長から構成され、投資の最高決定機関であると共に、合弁会社の国家出資比率をも決定する。
(3) 観光関連投資
1972年に観光省が設立され国家資金によるホテル建設が始まった。1970年代後半から1980年代にかけて種々の法律が施行され、観光部門への民間投資に対する特別なインセンティブが与えられた。このため、国際級ホテルの建設投資が促進されることになった。特にこの分野で政府との合弁会社設立が許可され、政府は全体の25%のシェアを持つが経営は全面的に民間出資者に任されることとなり、この合弁会社は広範囲にわたる免税特権や利益の海外送金が認めら、拘ることから、1977年以降、以下の合弁会社が次々と設立されくホテル、運輸を中心に観光部門への投資が進められた。
1] Syrian Arab Company for Touristic Establishment(SACTE)
2] Syrian Transport and Tourism Marketing Company(Transtour)
3] Orient Tours
4] Sayyida Zeinab Company for Tourists and Visits
5] Armit Company for Tourist Investment
このうちSACTEはこの分野のパイオニア企業としてシリアの実業家オスマン・アイディ氏により1977年設立された。同社は現在SACTEを持ち株会社とする12の子会社より構成され、その中核である“Cham Palace Hotel”は、シリア内で17の高級ホテルを所有運営している。設立当初1,000万シリアポンドであったSACTEの資本金は現在5億シリアポンド、総資金は150億シリアポンド、株主数約4,000人の規模に成長している。
一方Transtourは、観光に関わる運輸交通及びマーケティングを事業内容としており、この分野への投資を行ってきた。