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3. シリアの観光概要

 

シリアの観光資源は、自然、文化遺産、そして伝統的な旧市街の三つに大別される。数多い観光資源の中で、ダマスカス及び、アレッポの旧市街、パルミラ遺跡、ボスラ遺跡がユネスコの世界遺産として登録されている。紀元前3千年に始まる古代都市文明や、フェニキア文化から、ローマ、十字軍、オスマントルコに至る、5千年の歴史文明の遺跡及びイスラム文化がその中心となっている。また、地中海岸の地域ではマリンスポーツや海水浴の楽しめる海浜リゾートが点在し、近隣のアラブ人観光客を中心に夏の観光スポットとして今後の開発も期待されている。

各々の観光資源の概略について以下の順で説明を加えたい。

ダマスカス市街、ダマスカス近郊、パルミラ、ハマ、その他の地域

 

4. シリアの観光と観光資源

 

(1) ダマスカス市街

ダマスカスはシリア共和国の首都であり、政治・経済・文化の中心として130万人の人口を有する大都市となっている。この町は、旧約聖書が書かれた時代から連綿と続く、現存する最古の都市の一つである。市内の中央を流れるバラダ川の南側は未だ城壁の残る旧市街で、北側が新市街である。キリスト教徒にとっては、パウロが改宗した地として、イスラム教徒にとってはアラブの英雄サラディンの眠る地として神聖な都市とされている。市内の重要な観光スポットは旧市街に集まっており、それほど移動せずにそれらを回ることができる。市街地の北側には標高1,150mのカシオン山がそびえ、ダマスカス市街を一望できる展望スポットとして観光客が一度は訪れる所となっている。ここから眺める夜景もすばらしい。伝説では、この山は禁断の実を食べたアダムとイブが天国を追われて最初に降り立った所といわれている。ダマスカスとはキリストが生きていた時代の言葉=アラム語で“水のあるところ”を意味する。バラダ川の護岸沿いに設備を施した噴水が、目抜き通りのそこここで涼しげな水しぶきを上げている光景は見ていてほっとする。

1日5回、礼拝を呼びかけるアザーンの声が各所のモスク(イスラムの寺)から鳴り響き、信者が三々五々集まってくる姿はイスラムの国を実感させる。

1] ダマスカス国立博物館

シリア国中から発掘された出土品の多くが集められている。

1919年に建設され、その後1961年まで増築がおこなわれ現在に至っている。時代に応じて、先史時代、原始シリア、古代シリア、アラブ・イスラム時代、現代芸術と5部門に分けて展示されている。(観客の見学順路と必ずしも時代順が一致してはいない。)

入館後最初の通廊では古代の陶磁器、ガラス製品が目につく。オロンテス川をモチーフにしたモザイクの石畳、黒い玄武岩でできた彫像、ハウラン出土の青銅の兜等。パルミラ展示室では紀元後3世紀頃のパルミラ古代墓から出土した胸像や、家族の団らんを示しているグループ像がある。一家の主が左手を下側について横たわり、彼の家族が回りを取り囲んでいる姿は、当時のパルミラの貴族が死後の平安を願って作らせた棺をかぎるレリーフである。

 

 

 

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