7. 調査報告会の概要
以下に平成11年1月31日に大阪市内のホテルで行われた調査報告会の概要は以下の通りである。なお、今年度の報告会は「観光に関する学術研究論文の入選発表」と合同で約200名の聴衆を集め、「シルクロード観光学のすすめ」として行われた。
各講演者の講演内容
第1部については今回のシルクロード調査と直接の関連はないため、ここでは、プーリー・アナビアン大阪音楽大学講師、樋口隆康先生、新井国際観光開発研究センター専務理事、西藤橿原考古学研究所総括研究員・パルミラ発掘調査隊長による講演を記録する。
●プーリー・アナビアン大阪音楽大学講師の講演概要
「ペルシャ古典楽器サントゥールの紹介と演奏」
アナビアン先生によれば、ペルシャの古典楽器サントゥールについて以下のように説明されている。
これはペルシャに生まれた楽器です。長方形の箱の上に弦を張り、それを2本のバチでたたき演奏します。弦は、古い昔は羊の腸で作りました。シルクロードの交易が始まると、弦は中国産の絹に代わりました。そして、今は真鍮と鉄の弦6弦の数は72本です。
さて、このサントゥールはどんな音楽を奏でるのでしょう。
西暦1259年、バグダッドを訪れた中国人常徳は、次のように記しています。
「バグダッドのカリフは重い頭痛を病んでいた。楽人がその病を治そうと、86弦の楽器を奏でた。だが、カリフの病は一向に治らない。そこへ、72弦の琵琶を奏する楽人があらわれ演奏を始めた。すると、たちまちカリフの病は治った。」
民族音楽の第一人者、東京芸術大学教授小泉文夫先生は、こんな風におっしゃって居ます。
「もし死ぬ前に、2つだけ好きな音楽を聴いていいと言われたら、私は迷わずにペルシャ音楽と新内を選びます。サントゥールの消え入る様なピアニッシモの静けさの中に、ペルシャ繊毯の模様のようなメロディーが流れるのです。そして四分の一音を使った絶妙な音程の中にある不思議な快感は、口では説明できません。アーヴァーズと呼ばれる拍説を感じさせない自由なリズムの部分は、芸術を最高に発揮する緊張に満ちたもので、どんなすばらしい旋律も一度耳にしたら二度と聴くことができない、一回限りの誠に貴重なものです。ペルシャ音楽は魂の渇きを癒す豊かさと、生き甲斐を感じさせる輝かしいほとばしりに満ちているのです。
演奏は、最初にアナビアン先生のソロ演奏があり、続いてアナビアン先生のお弟子さんで大阪音楽大学とイラン国立芸術大学でサントゥールを勉強され、現在もペルシャ音楽の研究、指導、演奏活動をされている谷正人氏が紹介され、お2人によるサントゥールのデュエット演奏が行われた。
●特別講演「シルクロードと私」
樋口隆康 京都大学名誉教授・シルクロード学研究センター所長
樋口先生ご自身の長年にわたる考古学研究、海外追跡調査などにつきこれまでの御経験を振り返ってわかりやすくお話していただいた内容をかいつまんで紹介したい。