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第2部 各 論

 

I 東京都における公共投資の現状と課題

 

東京都政策報道室計画部

計画担当課長  大和田 哲生

 

1. 東京の社会資本整備をめぐる諸課題

 

(1) 変化に直面する東京

 

20世紀の東京は、人口と経済の規模が大幅に拡大し、急激な都市化が進行する右肩上がりの時代を経験してきた。その過程においては、近代国家の首都としての都市整備、震災及び戦災からの復興、日本経済の中心地としての産業基盤の整備、さらには交通混雑や住宅難、ごみ問題、地価高騰などさまざまな大都市問題への対応が課題とされ、これらの課題克服のために公共投資による社会資本整備が重要な役割を担ってきた。

一方、将来を展望すれば、東京をめぐる状況は、成熟化とグローバル化を軸に大きく変化しつつあり、21世紀の東京は、以下のような特徴を有する成熟社会を迎えようとしている。

 

東京が迎える成熟社会

1] 人口は、少子高齢化の進行にともない減少へと向かう。

2] 経済は、低い成長にとどまり、サービス化が進む。

3] 価値観、世界観の多様化が進み、量から質へ、組織から個人へと価値基準が変化する。

4] 環境面での制約が強く意識され、地球環境の持つ意味が重視される。

5] 地球規模での情報化が進み、個人が世界と直接つながるようになる。

 

(2) 量的な充足と質的な拡充が求められる東京の社会資本

 

急速な都市化の進行により、短期間に世界最大規模の巨大都市圏を形成するに至った東京においては、依然として過密解消や混雑緩和などの大都市問題を抱えており、道路や都市公園、良質な住宅ストック等が未だに量的に不十分な状況にある。

一方、20世紀の成長社会から21世紀の成熟社会へと時代が大きく転換しようとする中で、少子高齢化への着実な備え、環境や安全への一層の配慮、快適で質の高い生活環境の整備等に対する社会的要請が高まっており、次世代を見据えた新たな社会資本の整備が必要とされている。

すなわち、東京においては、依然として都市構造の是正が求められているなかで、社会構造の成熟化が進みつつあり、社会資本の「量的な充足」への対応と「質的な拡充」への対応が同時に求められる極めて難しい状況に直面している。

 

 

 

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