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(ii) 事実と異なった比較検討として別な社会情勢や別な管理決定を選択する

3.8 何と何を比較すべきなのかを明確に定義するには明確な方針が必要であり、その定義を明確に設定すべきである。複雑な活動の結果が事前の予測通りになることは決してない。しかし、結果が予想以上に良くも悪くもなる場合もある。その理由が「社会情勢」に起因することもあれば、責任団体の管理下にある行動に起因する場合もある。後者の理由としては、たとえばプロジェクトの管理体制、責任団体自体が予測した条件設定、ある政策特有の性格などがある。

 

(iii) 評価結果を目標とする結果並びに選択した社会情勢及び管理決定と比較する

3.9 事前評価と事後評価に使用される技術的方法は、しばしば同じようなものである。たとえば、事前評価でも事後評価でも、プロジェクト、プログラム、政策の直接的及び間接的な費用と便益を判別し、できるかぎり評価する必要がある。しかし、事後評価では実際のデータに基づいて評価を行い、事前評価では予測や推測に基づいて評価する傾向がある。

 

3.10 事後評価では、起こったことをできるかぎり定量化した上で評価し、目標結果と比較し、1つないし2つ以上の事実と異なった-社会情勢や、管理または政策上の決定事項が異なる場合に得られる代替的結果-の比較評価を行う。この比較評価では、できれば政策が関係しない「統制集団」を含めるべきである。

 

3.11 比較基準として通常採用されるのは、検討中の活動を実施しなければどうなったかという基準ケースである。また、事前評価段階で検討された代替案の1つないし2つ以上を実施した結果を検討するのもよい。場合によっては、実施時に実現可能な選択肢である限り、当初評価しなかった選択肢を検討するのもよい。

 

3.12 事後評価では、プロジェクト、プログラム、政策がその短期的目標と中期的目標の達成に成功したかどうかを評価するだけでなく、その時点の目標達成が最終目標にどう寄与したかも評価する必要がある。

 

3.13 予想以上に良い結果を適正な管理や適正な政策のおかげとし、予想以上に悪い結果を予測できない社会情勢の変動のせいにしようとする誘惑は常にある。実際上、こうした両結果を完全に分離することは不可能であるが、適正な事前評価ではそうした両結果を明確に峻別する。

 

(iv) 評価結果と推奨事項を提示する

3.14 事後評価結果の報告書では、次の事項について総括すベきである。

・事後評価結果が事前評価での予測と異なるのはなぜか、

・活動は目標達成にどの程度効果があったか、またそれはなぜか、

・その費用効果、

・評価結果は将来の管理または政策上の決定事項にどんな意味をもつのか。

 

3.15 通常は、得られた結果に基づき将来のための推奨事項を提案すべきである。こうした推奨事項としては、たとえば調達実務や供給方法の変更、プログラムの継続、修正、変換などがある。

 

(v) 評価結果と推奨事項を普及させ、利用する

 

3.16 評価結果と推奨事項は将来の意思決定に導入すべきである。その導入方法には上級管理職の承認が必要になるものもある。評価結果を団体内に広く普及させるべく努力する必要がある。そのためには、共通特性を持つ多数の評価から得られた結果を盛り込んだ要点概要書や総合報告書を採用するのがよい。

 

3.17 セキュリティや商業上の機密保持による正当な理由がない限り、評価報告書や調査書は公表すべきである。

 

 

 

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