日本財団 図書館


009-1.jpg

 

農村らしい町を目指して

〜都市と農村の共生〜

三笘善八郎(大分県大山町長)

 

大山町の広さは、約45.7km2ありますが、大分県58市町村の中では小さい方から8番目です。地形は大変急峻で、大部分を山林が占めています。

大山町では次の三つのことを町づくりの基本に掲げています。

1、住みつづけたくなる町

2、住んでみたくなる町

3、夢と希望と誇りをもてる町

これを実現するために、今後は農村の特徴を生かした環境づくりを進めたいと思います。これまでの農村の環境整備は、ともすれば都市追随型の利便性追求に重点が置かれていました。しかし、今や農村は、都市にはマネのできない快適性をアピールする時だと思います。

この快適性というのは、数値に表しにくいところがあり、今までの町づくりの中では、ほとんど評価されませんでしたが、緑の豊かさ、空気のきれいさ、水のおいしさ、静けさ、街の落ち着きやたたずまい、動植物との関わり合い等々、農村には都市にない素材が無尽蔵にあります。

具体的には、広葉樹を主体にした山の再生、親しみやすい自然石を使った護岸の整備、生活排水の完全浄化を進めます。

広葉樹を主体にした山の再生については、平成3年に襲来した17・19号の台風被害を神の啓示と受け止め、杉に向かない土地に多種、多様な広葉樹を植えて森づくりをしております。林業不況が長く続き、杉や檜の材積を増やして所得を得る時代は終焉しました。山林経営から森林経営へと方針を変えて、都会の人達に森林空間を提供したいと思っています。

自然石を使った護岸についても、建設省の協力で実現しつつあります。

生活排水の浄化は、建設省所管の特別特環保全下水道、農水省所管の農村集落排水事業、厚生省所管の合併処理小型浄化槽を適所に配置し、きれいな水を大山川に流します。

最近では週休2日制が浸透して、都会の人々は田舎に行って見たいと思っているのではないでしょうか。農村にある種の憧れ、郷愁、つまりノスタルジィを感じているのではないでしょうか。都市は人間が生活する場所としては、過密すぎてストレスが蓄積されるからです。

今後、農村が生き残るため一つのキーワードは、都会と農村の共生ではないかと思います。そのためには農村が環境を整備し、都市住民の受け皿にならなければならないと思います。

日本はもちろん、大山町もかなり豊かになりました。しかし、その陰で多くの自然環境を壊してきました。日本人は自然は先祖からの預かり物という意識を持っていますが、ヨーロッパ人やアメリカ・インディアンは、自然は次の世代からの預り物という考えであり、本当に環境を大事にしています。その考えに立てば、子供たちに自然を渡すときは今以上にきれいにして渡すことが必要です。大山町もこの環境問題について、アメリカ・インディアン的な考え方を持って息ながく取り組んでまいりたいと思っています。

 

009-2.jpg

7〜8月は、すももちぎりツアーで大にぎわい

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION