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諸塚村戸下神楽の「山守(やまもり)」は、十二年に一度の大祭の折に演じられる。神楽は、集落に対面する森の中にある白鳥神社から出発した行列から始まる。この行列は、猿田彦に先導され、鬼神、荒神、天神、手力男命(たぢからおのみこと)、鈿女、天照大神など、当日出演する神々が勢揃いして神楽宿へと向かうものである。天孫降臨の物語が、この神楽の骨格となり、荒神信仰や天神信仰、土着の民間信仰などが混交したものだと思われる。

山守神事は、神楽の一行が神楽宿へと舞い入ったあと、始まる。神楽宿から山守役の演者と従者が山に入り、神事を行ったあと、深山へと分け行った山守が、神樹を切り、それを杖につき、蔦カズラを笠にし、身体を巻いて、再び山を下るのである。山守は、急な坂道を一気に走り下って神楽宿へと達する。そして、神楽宿に座す神官と問答をする。その時、山守は、

――法の御山(みやま)・中山・奥山に差し入り、悪神を祀り鎮めて来た

と述べるのである。山守こそ、この土地に暮らしつづけた先住民の残像であろう。

 

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終夜、諸塚神楽は舞い続けられる

 

 

 

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