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鼎談…井上慶隆+渡辺史生+谷川健一

風土を読む。吉田東伍

 

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四十代前半の吉田東伍

 

谷川…吉田東伍の最近の話題についていえば、新潟県北蒲原郡安田町に去年の九月十七日に吉田東伍記念博物館が誕生したことです。この意味は、大変深いものと考えています。吉田東伍は、『大日本地名辞書』の編者でもあり著者でもあります。日本の地名研究の先達を挙げるとすれば、吉田東伍と柳田国男です。柳田国男は『日本の地名』を書き、これは地名研究者の指標になっていますが、一方、吉田東伍の『大日本地名辞書』は地名研究者だけでなくて、歴史家にも今もって活用されている。

吉田東伍の『大日本地名辞書』が完成して、上野精養軒で祝賀会を開いたのが明治四十年(1907)です。それから九十一年後の今日まで、未だに日本の地名辞書の中では『大日本地名辞書』に匹敵するというか、ぬきんずるものはないのです。最近は、平凡社と角川書店から県別の地名辞典が出版されていますが、それらを見ても不満の部分がかなりあります。それで吉田東伍のを見てみると、足りないものが補われるのです。これは画期的なことで、驚嘆すべきことです。九十一年前の地名辞書が今もって最先瑞の知識を私たちに供給できる秘密はどこにあるのだろう、と私はかねがね愛用しながら思っているわけです。

どうして不朽の名著として残りえたのか、吉田東伍の生い立ちから、あるいは風土からえてみたいと思っています。

 

 

 

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