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しかし回を重ねるごとにリラックスして参加することが出来たのです。これは上のような状況でなければありえないことでした。自分の意見を人に開いてもらえる喜びが、このような爽快感や「楽しかった」という思いにつながったのだと思います。

私は今までワークショップに何らかの具体的な結果や結論を求めすぎていた気がします。しかし今回、熊取煉瓦工場のワークショップに参加した大きな収穫は、ワークショップのひとつのあり方を学ぶことができたことだと思います。ワークショップの回を重ねるごとに住民の意識―「熊取をなんとかしたい」「煉瓦工場をみんなで使いたい」―が高まり、その意識が参加者内で共有され、それから具体的なプランづくりへと発展していく。これは住民の意識を醸成させるすばらしい下地になるものだと思います。隣の人は何する人ぞ、という世の中にあって、お互いの顔を知り、地域の共有財産である「煉瓦工場」の使い方について討議しあう場があるというのは、地域にとってすばらしいことだと思います。私はこのように自分の住んでいる地域をなんとかしたい、と思っている方々が生活している地域は本当になんとかなると思っています。それは他力本願的な意味ではなく、ワークショップをすることによって地域住民の意識や価値観をお互いに知り合う努力をしつづけることが前提ではありますが、例え具体的なまちづくりプランが実現するまでに時間がかかったとしても、住民の意識の中に「自分の町には宝がある」という誇りや町に対する愛着が根付いているはずです。ワークショップでの結果が目に見えないと、その成功や失敗がわかりにくいとは思います。しかしながら、その「自分の町には宝がある」という意識を何らかの方法で、人から人、特に子供へ伝えることによって継続的にその意識が、地域に根付くことも、ワークショップの大きな成果だと思います。人の意識や価値観を皆で共有することは、いわゆる絵空事であって、単なる理想なのかもしれませんが、ワークショップはそのきっかけづくりにはなると思います。今回の熊取煉瓦工場のワークショップでは、その過程が見えた気がします。自分以外の地域住民に、自分の率直な意見を言える環境を、この数回のワークショップで整えられた今、熊取の皆さんの今後の動きに注目をしたいと思います。ワークショップに参加することの楽しさを教えていただけた、参加者の皆さんに感謝の意味を込めて、今後私に何かできることがあったら、是非お手伝いさせていただきたいと思います。

 

 

 

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