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2-2 泉南地域のまちづくりの動向

 

(1)位置・沿革

熊取町の属する泉南地域は、大阪府の南端にあり、北より岸和田市、貝塚市、熊取町、泉佐野市、田尻町、泉南市、阪南市、岬町の5市3町から構成されている。大阪都心からの距離は25〜55km圏にあり、大阪府南部の衛星都市群と成っているが、近年の住宅開発動向により、ベッドタウンとしての性格を強めつつある。

地勢的には、和泉葛城山系から大阪平野及び大阪湾に到る南東から北西にかけて、山間部、丘陵部、平坦部、海岸郡の構成と成っている。

気候は、温和で雨量が少ない瀬戸内式気候に属している。

この地域の歴史は古く、先史時代からの遺跡も多く見られ、古代には瀬戸内海と大和を結ぶ地域として繁栄した。古くはチヌ(茅渟または血沼)と呼ばれ、現在の和泉府中に清泉が発見されて以来、「和泉(いずみ)」と呼ばれるようになったと言われている。

江戸時代、和泉の国の大名は、岸和田藩(岡部氏・5万3千石)と伯太藩(渡辺氏・3千6百石)があり、産業的には和泉木綿の産地として有名であった。

明治以降の近代化も繊維産業が牽引し、諸鉄道の開通、海外市場の拡大とあいまって、著しい発展を見た。その後、さらに金属・機械器具工場の立地も進んで、泉州工業地帯の一翼を担ってきた。

しかしながら、昭和の後期となると、他の地域の工業の近代化に遅れをとるようになり、地域的には低迷の時代を迎えるようになる。それを大きく転換していく契機と成ったものが関西国際空港の建設と関連地域整備である。これにより、住宅地開発を初めとして地域変革の波が押し寄せることとなったが、時代は大きく低成長から不況に移り、様々な地域課題が山積している状況にあるといえる。

 

(2) 泉南地域のまちづくりの動向

泉南地域は前述したように豊かな歴史・文化を持ち、先史時代より常に先進地域としての歴史を刻んできたと言えるが、近年は日本の国土幹線軸から外れてきたこともあり、大阪府下においては整備・開発が遅れてきた地域になっていた。産業面でもまた都市施設整備においても大阪府下では低位の水準にあると言わざるをえない。

 

1] 関西国際空港と大規模プロジェクト

これを打破する契機として位置づけられたのが、平成6年に開港した関西国際空港である。関西国際空港に関連して、実に数多くのバラ色の夢が描かれた。主要なものを挙げると、りんくうタウン、阪南スカイタウン、岸和田コスモポリス、二色の浜環境整備事業等がある。しかしながら、現状を見るとき、岸和田コスモポリスの頓挫を初めとして、多くの事業が当初計画の縮小や入居難に陥っており、かえって問題を拡大するといった事態になっている。

 

2] 地元主体のまちづくりの展開

以上のような関西国際空港を契機としたまちづくりは依然として続けられているというものの、その反省の上にたって、現在は地元主体の地道なまちづくりの展開に活路を見出そうという動きが大きくなっている。その大きな要素に開発により失われてきた自然や歴史的資産の保存と活用といった課題がある。泉南地域は著しい開発が遅れたことから逆に大阪府にあって、自然や歴史的資源が豊富に残ってきた。関西国際空港と関連地域整備が進むに連れて、地域のアイデンティティの喪失を恐れる声が日増しに高まり、現在各地で自然や歴史的資産を活かしたまちづくりが取り組まれつつある。

低迷を続ける繊維産業を中心とする産業も、もう一度立て直していくために、行政施策に頼るだけでなく、独自の方途を求めて模索が続けられている。

 

 

 

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