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図3-3 茅葺民家の分布

 

瀬違いを含めて渋海川の旧河道が複雑に入っているため、川沿いの集落の多くは、それぞれに見通し、奥ゆき、広がりなどがあり、集落景観を多様なものにしている。

山地斜面や地すべり斜面に立地する集落は、斜面方向が一律であったり微地形の影響などで、集落をひとつのまとまりとしてみることがしにくい場合が多い。しかし、集落の様子が把握できないことは、見方を変えれば、歩くなど移動することで得られるシークエンス景観(連続して展開する動景観)によって集落のイメージをつかむしかなく、そうした変化は、集落めぐりの醍醐味である「新しい展開への期待感」を増幅させる効果がある。しかし、こうした立地の集落は日常生活の利便性が乏しく、世代交替ができないなどの理由で移住する住民が目立ち、集落として成り立たなくなる傾向にある。

山村イメージのシンボルともいえる茅葺民家は減少著しいが、集落に点在する程度には残っており、山村集落の雰囲気を高める要として生きている。

地質的に生活に利用できる岩石類が乏しい土地柄ということもあり、戦後、主に昭和30(1955)年前後から信濃川の玉石を用いて敷地の法面を固めることが盛んに行なわれてきた。伝統的に培われてきた文化の結晶ではないが、ひとつの時代背景を語る集落の風情として欠かせないものになっている。

集落内や集落周辺には稲を干すハサ木が多い。最近は機械乾燥が主流になってめっきり減ってしまったが、仙田郷にはまだ多くのハサ木が残り、ひとつの地域色をだしている。しかも、ハサ木の樹種はハンノキやタモの類が一般的だが、ここでは多種多様な樹種を用いており、そのバラエテイーに驚かされる。すでに使われていないものもあるが、これは景観的に大きな特徴といえる。

 

 

 

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