第3部 解析作業部会による研究成果
1. はじめに
平成7年度に始まった歴史的海上気象データの電子化事業は現在まで4年間継続し、この事業によってデジタル化されたデータは約159万通にのぼる。このうち、品質管理を受けたデータは約99万通である。これに気象庁が作成した約6万通を合わせて約105万通のデータセットを作成した(KoMMeDS-NFデータ)。
これらの海上気象データは地球環境問題の解明に役立つ貴重なデータである。これまで本事業でデジタル化したデータを利用して、海洋気候の予備的な解析を行ってきた。しかし、現在まで多くのデジタル化データが蓄積されてきており、さらに厳密な解析ができるようになってきた。
この要望に応えるため、平成10年度第1回委員会において、山元委員長はKoMMeDS-NFデータを用いた気候変動の厳密な解析及び多様な研究を目的とした専門の気候研究者から成る解析作業部会の設置を提案した。この提案は委員会において了承され、花輪委員を部会長とする解析作業部会が委員会の下に設置された。
第3部では解析作業部会の次の会員による研究成果を掲載する。
題名:Kobe CollectionおよびCOADSによって推定した20世紀前半の北太平洋海面熱フラックスについて
著者:岩坂直人 (東京商船大学海洋工学部)
要約:海面熱フラックスをKoMMeDS-NFおよびCOADSに納められている気象観測データからバルク法で計算し、気候学的な海面フラックス場の様子を調べ、データの利用可能性について検討した。
題名:気候値の勾配がもたらす誤差の評価
著者:見延 庄士郎(北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)
要約:岩坂氏がグリッド化アルゴリズムとして使用した、緯度経度5°×5°の月毎の単純平均において、BOX内に気候値の勾配が存在することに起因する誤差の大きさを評価した。