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第1章 調査の目的および進め方

 

1. 調査の目的

わが国の貨物輸送の中で、トラック輸送は経済のソフト化やサービス化の進展に伴い、ジャスト・イン・タイムサービスなどの要請に応え著しい伸びを示した。しかし、その一方でトラックへの過度の依存によっていくつかの社会的問題が深刻化している。

特に、COP3における京都議定書の締結やそれを受けての地球温暖化推進大綱の策定等、近年、地球環境問題への関心が高まっており、その中でも重要な問題として注目されている地球環境問題では、CO2(二酸化炭素)の排出による地球温暖化問題について緊急な対応を迫られている。わが国全体のCO2排出量の約20%を占める運輸部門においても、その抑制が緊急の課題となっている。

こうした背景のもと、トラック輸送に過度に依存しない環境負荷の小さい物流体系の整備、すなわち「環境にやさしい」物流システムの形成が不可欠とされている。

そのための対策の一つとして、輸送手段をトラックから鉄道や海運に移行するモーダルシフトの更なる推進が求められている。しかしながら、トラックからのモーダルシフトは、これまでも物流の効率化を進める方策のひとつとして一定の取り組みがなされてきたものの、荷主側ではジャスト・イン・タイムサービスへの対応をはじめとしたリードタイムの問題や、貨物やコンテナの積替えや荷役が必要になることから、貨物の荷崩れや荷傷みの危険性があること、これを防ぐために梱包に工夫を要すること、更に、受け皿の輸送能力や輸送ダイヤなどがスムーズに適合しないことなどの多くの問題があることから大幅な進展には至っていない。

そこで、本調査においては、地球環境問題への対応に向けたCO2排出量の削減という視点から、モーダルシフトの一層の推進と定着を図ることを目的として、過去の事例や荷主意向の把握から阻害要因を検証するとともに、阻害要因の克服に向けたモーダルシフトの試験輸送を実施し、モーダルシフト実践に向けてのきっかけを与えるとともに今後のモーダルシフト推進のための方策を得るための調査を行なうこととする。

 

2. 調査の進め方

本調査では、既存事例や荷主企業に対するアンケート調査及びヒアリング調査により、モーダルシフトに対する今後の可能性や条件、問題点等を把握した。更に、条件によって自動車輸送から鉄道または船舶にシフト可能な境界領域輸送を把握するとともに、別途に、地方運輸局の協力も得て抽出した事例について、モーダルシフト実現を目指した試験輸送を試みた。

これらの調査結果によりモーダルシフトの効果を改めて明らかにするとともに、モーダルシフト推進上の課題の解決策の方向と、更なる実現化に向けてのポイントや課題を整理することとした。

 

 

 

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