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地震と津波

阿部邦昭

日本歯科大学新潟短期大学

 

〇はじめに

津波の性質がわかるようになったのは、津波が残した痕跡の調査を通じての最大水位の地理的な分布が明らかにされたり、検潮所を通じて水位の時間的な変化の記録が取れるようになってからのことである。

現在、観測データを基にして、コンピュータを活用した津波波源の研究を行っているが、津波はその伝搬過程で海底地形の影響を大きく受ける。波源の情報を得るためには、海岸で得られた津波のデータを海底地形に照らし合わせて波源にもどしてやる手順を踏むので、海図や海底地形図は研究上きわめて重要である。津波と地震や海底地形との関係について述べる。

 

○過去の記録(スライド説明)

津波現場のスケッチや写真は文書とともに記録の原点ともいえるものである。この中からいくつかをスライドで紹介する。

1896年 三陸地震津波 (風俗画報による津波の描画)

1960年 チリ地震津波 (石巻北上川河口を遡上する津波段波の写真、論文より転載)

1964年 新潟地震津波 (波状段波として信濃川を遡上する写真および新潟下町の浸水写真、記録写真集より転載)

1983年 日本海中部地震津波 (秋田県釜谷浜海水浴場の被害写真)

1992年 ニカラグア地震津波 (日本派遣調査団のエルトランシトの被害写真)

1993年 北海道南西沖地震津波 (奥尻島の被害写真)

1995年 兵庫県南部地震 (道路を横断する断層の写真)

 

〇津波記録の収集

津波を水位の時間変化として記録し、その記録が研究上重要な役割を果たしているのが検潮所である。日本では、明治に入ってから検潮所による潮位観測が始まったが、アメリカではそれより古く、1854年の安政元年東海沖でおきた津波が、サンフランシスコとサンディゴで観測されている。北海道南西沖地震津波の粟島検潮所の記録によると、最初の1時間に9波を数え、平均7分という周期の短い波が観測されている。これは観測点が粟島という小さな島であったことが影響している。また兵庫県南部地震では、淡路島西部の江井という観測点が、地震のゆれを記録して約30分後ピークからピークまでの振幅で75cmの津波を記録したことがわかった。

 

 

 

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