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MIRCの事業概要

 

MIRCの行っている事業の中心は、日本財団の補助による「海洋データ研究」事業であるが、この他にも科学技術庁の科学技術振興調整費「北太平洋亜寒帯循環と気候変動に関する国際研究」の一環である「高精度海洋データ整備のための品質管理手法の研究」の委託調査研究を実施してきていると共に、1998年度では、社団法人全日本トラック協会の受託事業「二酸化炭素の実態把握に関する調査研究」を実施してきている。また、情報提供部門(海洋情報室)が中心となって若干の事業を実施してきている。なお、ここでは海洋情報の品質管理・提供にかかわる事業のみを扱い、普及啓蒙関連・国際協力関連の活動は章を改めて述べる。また、1997年4月から1998年12月までのMIRCの歩み、及びMIRCの研究業積についても章を改めて述べる。

 

1.「海洋データ研究」

基礎整備

日本財団の補助による「海洋データ研究」は、1997年度から始まる5ヶ年計画のもとで実施されている。その事業年次計画を概念的に示したのが図2である。1997年4月27日にMIRCが発足したが、計算機や情報・通信施設の稼動が10月2日からであったこともあり、1997年度はMIRCそのものの全体設計、システム整備、JODCからのデータベースの移管を含めたデータベースの構築に多くの時間が割かれた。この基盤整備は1998年度においても引き続いて行われ、その年度末までに、基本的な整備が完了する予定である。

水温(各層系)データ品質管理ソフト開発・品質管理処理・水温統計処理技術

研究技術開発等の事業では、1997年度に水温・塩分データを対象とした品質管理ソフトの開発を行った。このソフトは、すでにJODC/MIRCに収集されているデータベースの品質管理に適用することはもちろんであるが、JODC/MIRCに流入してくるデータの質の向上を図るために、県水産試験場等のデータ提供機関の現場で容易に用いることのできるものを想定して開発した。この開発に際して、和歌山県水産試験場(現和歌山県農林水産総合技術センター水産試験場)の非常な協力を得ることができたので、その海洋観測データに先ず適用し得るソフトを開発すると共に、データ・ミスがどのような形態で、どのような編集プロセスにおいて発生するかについて調べたこの結果については一部、日本海洋学会や海洋調査技術学会で発表している。ミス発生の最大の原因はパンチミスであるが、開発されたソフトの“船速チェック”、“水深チェック”、“レンジチェック”、“密度逆転チェック”機能等で大半が発見し得ることが示されている。単純なパンチミスが生じる最大の原因は、データ提供機関の入力作業の形態に関わるものである。通常データベースの収集機関への送付は現場における研究・業務が終了してから、いわばボランティアベースで改めて、決められたフォーマットに入力・送付されることが多い。この作業は、時には、非専門家(時にはアルバイイト)によってなされる場合もあり、一般に十分な品質管理が実行されていないことによる。このことを考慮して、我々の開発したプログラムは、専門的な知識のない担当者でも容易に品質管理を行えるものであり、またそれもゲーム感覚で楽しく行えるものでなければならなかった。上に述べたような各種のチェック作業は、決して目新しいものではなく、多くのデータ管理機関・各国の海洋データセンターで多かれ少なかれ開発され、用いられているものである。しかし、これらはいわば専門家用のソフトであって、容易さ・楽しさまで考慮されたものはなかったと言いえる。

 

 

 

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