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3 調査研究の概要

本調査研究の第1章では、呉市及び呉地方拠点都市地域の社会環境の現状を自然条件、社会経済条件、交通体系の3点から検討を加えた。これによると、呉市は、重厚長大型工業に特化した都市として発展してきたが、円高の進展によって基幹産業が停滞する中で工業構造の転換が十分に進まず、県全体に占める市産業の比率が低下している。そして、同規模の都市の中では全国的にも例の少ない自然減・社会減による人口減少に見舞われている。呉市が圏域の中心都市として地域発展を牽引していくためには、多彩で創造性に富んだ産業基盤作りを行い、産業構造を多角化し、新たな高次機能の育成が必要である。すなわち、地域の活性化に資する広域機能の導入が望まれる。しかし、呉市が広域的な高速交通体系へのアクセス環境が不十分であることなどから高次機能の立地が難しいこと、また、急峻な山林の占める比率が高く開発余地が少ないためその受け皿整備が必要であることを明らかにした。

第2章では、呉市及び呉地方拠点都市地域の将来像を1]広島県第2期実施計画、2]呉地方拠点都市地域基本計画、3]第3次呉市長期総合計画をもとに検討した。1]においては、広域拠点としての基盤整備(東広島・呉自動車道の整備)と自立成長産業の育成が重視されている。2]において呉市は、新たな「瀬戸内海洋交流都市圏」の創造に向けた中心都市として、高次都市機能や産業業務機能集積の形成などによって地域の発展を牽引することが期待されている。3]においては、「創造とふれあいの海洋・拠点都市」形成に向けた基本戦略の一つに"マリノポリスの推進"が位置づけられ、その重点施策として新しい海洋開発技術を導入した大型浮式海洋構造物を活用した国際物流拠点の整備が位置づけられている。そして、このような将来像実現のためには、i)呉港を活用した自立的成長の牽引、ii)高付加価値産業の育成、iii)港湾を活用した大規模災害対応力の強化、iv)効率的なゴミ処理システムの確立による地球環境問題への対応、が必要であることを提示した。

第3章では、呉港の施設整備の状況と整備計画を整理し、新規の港湾施設整備や関連の交通体系整備の重点は広港区にある状況を確認した。併せて上位計画における呉港の位置づけを明確にした。広島湾の中では、呉港は国際物流拠点としての位置づけがなされ、この他にも海側の防災拠点、エコポートとしての役割が示されている。そして、貨物流動の実態を貨物量と品目・

 

 

 

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