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連邦予算法の「予備基金」が主な財源と指摘されている。こうした融資の実体は、個々の契約に基づくため、必ずしも明確ではない。また、構成主体の予算法にも歳入としては反映されない。しかも、構成主体が受けた融資の返済は、「移転資金」(Transfer)から相殺される場合があったり、逆に、構成主体と連邦政府の交渉によって返済が免除される場合もある。こうした個々のケースがどのように連邦・地方の決算に反映されるかは十分には解明されていない。

 

以上の諸点から、「移転資金」(Transfer)が連邦予算に占める比重(約12%)だけで、連邦予算がロシア全体の統合予算において果たしている財政資金の再配分機能を推し量ることはできないといえるだろう。むしろ、連邦国家でありながら、ロシア連邦では構成主体や地方自治体の財政が連邦政府によって左右される度合いが高すぎる点に問題があると考えることが妥当であろう。その場合、地方財政の歳入に連邦財政から移転される資金が占める比重が高いか否かという「定量的」な側面より、個別の合意によって、さまざまな資金が移転され、あるいは移転されないという、連邦政府の裁量権が高いという「定性的」な側面に問題があると指摘できるだろう。

 

(荒井 信雄/(社)北海道地域総合研究所理事長)

 

 

 

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