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ルーマニアでは、さらに、ブカレスト市と同様に、県知事を補佐する副知事までも首相による任命といった念の入れようである。この場合には、中央と地方の対立は、首長と地域住民の代表である議会との間で生じることになるが、その解決策としては、基本的には司法的解決手段が講じられているが、なかにはルーマニアのように、知事側と議会側との代表者を中心として構成される、領域的協議委員会による解決がある。このように、首長の権限が大きければ大きいほど、彼がどのような手続で選出されるかは、まさに中央地方の力関係を決することになるといえよう。

実際には、この中間に、基礎自治体が首長を選ぶ場合にも、ポーランドのように、間接的に議会が選出する場合、すなわち議院内閣制に類似した型(カウンシル制/一元的民主代表制)もある。

さらに、特徴的なことは、前述のように、ルーマニアの県には、任命制の知事がいるが、これとは別に県議会の議長が、他の公共機関との関係において県を代表する、県レベルにおける地方行政の首長であるとされ、これによって、県は任命制の知事をもつ国の出先機関であると同時に、間接選挙の首長をもつ自治体であるともいえるような、複雑な制度もある。これはまさに、中央の行政と地方の政治とを融合させるために編み出された仕組みだが、ここに体制移行諸国における制度設計の難しさが、現れているといえるだろう。

 

(4) 地方財政

 

法制度上、地方団体に広範な自治権が認められ、その代表を選出する制度が設けられていたとしても、現実に地域住民に充分な行政サービスを供給するためには、自ら自由に使うことのできる財源が充分になくてはならない。この財源を自治体がいかに獲得するかという問題も、地方制度の設計における難しい論点である。

多くの国では、地域間に格差が存在することから、すべての行政活動を自主財源で行うことを原則とすると、行政水準の格差はますます拡大する。それを是正するためには、何らかの財政調整の仕組が必要であるが、その仕組は基本的に豊かな地域から貧しい地域へ資金の再配分を行うものである以上、地域間対立を惹起する可能性が高く、その際、配分を効果的に行おうとすれば、中央政府による集権的な配分制度が不可欠となる。

こうした財政調整システムは、一般的には、我が国のような高度なものではないにしろ、すべてに国で整備されている。例えば、ポーランドの平衡補助金、ハンガリーの標準的補助金、ブルガリアの国家補助金などがそうである。特に、ポーランドのそれは、我が国のシステムに比較的近いものとなっている。

 

 

 

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