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さらに、こうした構造的特徴に加えて、いずれの国においても、指摘すべき特徴としては、都市部と農村部とでは異なる制度を設けていることである。都市部とは、特に首都制度のことであるが、首都の自治体には、他の基礎自治体とは別に、大都市であるが故に派生する事務に対する権限が付与されている場合が多いが、またその一方では、逆に中央政府の統制が強くなっていることが多い。また、首都制度の共通した特徴としては、首都そのものが2層制を採用していることである。

 

(2) 地方自治体の事務

 

中央政府と地方自治体との事務の分担は、一般に外交や国防、大規模な開発等は中央政府が受けもち、国民生活に密着した福祉やまちづくりは自治体が担当している国が多いが、国土管理や産業政策になると、一国の統治に必要な国家構造とその運営に関する基本方針やその自治体の行財政能力によって、中央が担当している場合もあれば、地方自治体が受けもっている場合もある。

後者の場合は、当然地方自治の範囲が広い。なお、地域住民の生活にとって重要な教育と治安維持を担当する警察に関する事務は、前述の国家統合の観点から、中央政府が直接行っていることも少なくない。しかし、自立性をもった地域の側からみれば、自らの言語や文化、伝統を次世代に伝えていくための教育及び社会秩序維持のための警察は、地方自治の中核をなすものといえよう。だが、それゆえに中央政府にとっても重要なのである。

このような観点から、体制移行諸国をみると、次のような特徴が挙げられるだろう。

第1に、基礎地方自治体の事務権限は、概括例示されている場合が多い。この点は、いずれの国も、ヨーロッパ地方自治憲章第4条第1項から第6項までの規定を参考としている。ところが、実際には、例示された事務についても、国も権限を行使しうる場合が多く、また、県レベルでの行使も可能とする規定なども見受けられ、その境界は厳密には不明瞭であり、融合型であるといえるだろう。この典型として挙げられるのが、ウクライナとルーマニアである。それに対して、ハンガリーの場合には、基礎自治体が当該事務を遂行できなければ、中央政府の出先機関との調整ののち、県の業務とすることが規定され、逆移譲の制度が整っている。あるいは、ポーランドのように、自治体の連合によって対応するケースもある。

 

 

 

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