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5 おわりに

 

以上自治体アクターが地球温暖化防止において果たせる役割の可能性について論じてきた。筆者は、温暖化防止の担い手としての自治体アクターの潜在的能力を高く評価している。自治体アクターは、1960-70年代の公害克服の大きな推進力となった。自治体からの積み上げ型の施策の有効性を示している。

過去の公害経験の実績をそのまま将来に投影してよいという保証はない。しかしながら、人々の生活に直接接しているアクターの存在を無視する訳にはいかない。むしろなんらかの形で自治体アクターの力を有効利用すべきであろう。そのためには自治体アクターの施策に、できるだけ大きな幅を残しておく必要がある。

いくら環境基本条例に経済的手法の可能性をうたってあっても、現行レジームで実際それが不可能であるならば話にならない。国家アクターは、自治体アクターの役割をより評価すべき時が来ている。

 

参考文献

 

植田和弘ほか(1997)『環境政策の経済学』日本評論社.

神奈川県自治総合センター(1995)『規制から市場へ・環境政策のパラダイムシフト』研究部報告.

ガレス・ポーター、ジャネット・ブラウン著(1998)『入門地球環境政治』細田衛士他訳、有斐閣.

東京都職員研修所(1996)『環境行政における誘導的手法の調査』中間報告.

東京都職員研修所(1997)『環境と共生した自動車社会を目指して』.

細田衛士(1994)「環境政策と市場経済 ―自治体政府の役割と貢献―」『季刊自治体学研究』夏号61,pp.4-11.

細田衛士(1995)「環境管理のための非規制的手法 ―経済的手法を中心に―」『都市問題』東京市政調査会、第86巻10号、pp.37-50.

 

 

 

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