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しかし、地球規模で見ると、ここで見落としてはならない重要なポイントがある。

第一に、そもそも原油の輸入段階において、先進国は硫黄等の不純物の含有量の少ない上質の原油を優先的に買い付けることによって、未然に大気汚染への負荷削減を図っている。しかし、途上国は相対的に単価の安い質の低い原油を大量に使用することとなり、途上国での大気汚染物質の排出は増加していると見られる。

第二に、どちらかといえば経済成長を重視する途上国諸国では、今日の先進国に比べて大気汚染に対する基準が緩く、また技術面、コスト面、実際に工場等を取り締まる制度も先進国ほどには発達していないことから、やはり途上国での大気汚染物質の排出量は相当多いと推察される。

第三に、多国籍企業と呼ばれる地球規模の大企業の中で、特にケミカル系のものは、先進国内では公害対策や近隣住民の反対などで立地の難しいプロセスの工場を、途上国への技術移転と途上国政府による誘致という形で途上国に建設し、危険なプロセスそのものを先進国から途上国に移しつつあることも指摘されている。先進国の関連工場は、途上国で生産、生成された半製品を輸入して最終製品にするわけである。(例えばインドのボパールで起きたU社の大規模化学工場事故などにその典型例が見られる。)

このように、先進国内では二酸化硫黄などのエアロゾルの発生はどんどん削減される方向にあるが、逆に途上国ではこれから当分の間は二酸化炭素と併せて二酸化硫黄や二酸化窒素、煤塵などを大量に大気中に放出し続けることは確実であり、その日傘効果もあながち「笑い話」では済まされない影響を及ぼすことも懸念されよう。

 

 

 

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