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HF(高周波)安定器のついた照明器具(従来の照明に比べ30%以上の効率改善)の例では、従前、年5千個程度であった生産に対し、91〜92年にこの政策によって2万6千の需要が創出された。この数字が95年には60万個に達している。この過程では学習効果が働き、単位あたりコストの低下が見られているとされる。さらに普及モデルに当てはめた場合、現在HFインバータ照明の市場シェアは10%程度であるが、2005年にはほぼ100%に達すると見られている。

米国の冷蔵庫のプロキュアメントの例では、世界中からの入札を行うことにより、当初市場で最大効率と呼ばれたものに対し、40%も改善された製品が調達され、なおかつこれに対する競争者が現れることにより、当初に比べて10%程度価格が下がっているとされる。この過程では、メーカーはそのような製品に関し、通常5年を要する開発期間を2年に短縮している。これは、プロキュアメントによって、作るべき製品のスペックが明確であったためとされる。

一方、テクノロジー・プロキュアメントの問題点としては、以下のものが指摘されている。

・市場・技術に関する観測が不正確であった場合は、誤った開発経路に踏み込む。

・市場に浸透しなかった場合のメーカーのリスク、不良な製品であった場合の市場のリスク。

・その効果の出現には長い時間を要するケースがある。

 

以上、新しい視点からの省エネルギー対策の例を示したが、いずれも民間ベースでの省エネルギー推進に際して、「官」の立場からの支援がきわめて有効と思われる事例である。

現在、ESCO事業の推進については、通商産業省の指導により(財)省エネルギーセンターに「ESCO事業実証委員会」が組織され、引き続き検討が進められているが、上述のような課題は、未だ残されたままである。ESCO事業が米国においていち早く定着しつつある陰には、公的施設への適応が大きくドライブをかけたとされている。わが国においても地方自治体におけるこのような事業の導入が望まれる。

 

 

 

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