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4. 成果の活用

 

本研究は、舶用主機関の経年劣化という、これまで定性的にしか解らなかったテーマに対し定量的な解析を試みた、過去に例のない有意義な研究であり、第2章及び第3章で述べたような知見が多数得られた。その知見の利用方法につき各担当会社の意見を聴取したが、それらは以下のように要約される(図4.1参照)。

 

4.1 本研究以降のステップ

実際に就航する機関の形式は、本研究で利用した実験機とは出力・回転数、絶対的なディメンジョン等が異なるため、性能変化の傾向は大差ないと考えられるものの、その変化の絶対値は同一とは限らない。従って、実船機関に於いて間接的計測から機関部品状況を診断するには、対象となる実機関と今回使用した実験機との相関を求めるステップが必要である。具体的なステップとして以下の項目が挙げられる。

1) 幾つもの実機関データを同時に、正確に取得するためのデータ収集手段の開発

2) 実機関データの収集及び実験機データとの相関解析

これにより、対象となる実機関の経年劣化を把握出来るようになる。また、多くの実機関データが蓄積され、トレンドを把握出来るようになれば、実機関経年劣化の定量解析をより広範囲に展開出来ると考えられる。

 

4.2 機関の故障予知・診断技術の向上

本研究からは、機関部品の経年劣化は、概してNOx発生を減少させる傾向があるとの知見が得られた。また、機関部品の劣化とこれに対する機関性能との関係を数式化し、劣化要因を組み合わせた場合の機関性能への各々の影響度を数値化することが出来た。これは、間接的計測(状態監視)によって個々の部品要素の劣化状態を推定することが可能となることを意味する。例として、機関部品個々の経年劣化基準時間を与えた場合、図4.2に示すような機関性能変化予測カーブを作成することが出来る。このように、実機関での経年劣化を把握出来るようになれば、以下項目のような機関の故障予知・診断・応用技術が向上すると考えられる。

1) IMO NOx 規制対応への応用(NOx実船計測の簡素化)

2) 劣化部品の推定、その劣化度合いの推測 ・ 部品交換時期予測、故障予知

3) 部品交換による機関性能改善量の推定

 

4.3 機関保守管理の適正化

機関の診断技術が向上すれば、個船毎に最適な整備計画を立てることが可能になると考えられる。但し、体系だった機関保守管理を行うには、個船毎での保守管理ではなく、フリート単位、更には船舶管理会社間・船主間での管理手法の共通化が望まれる。これには膨大なデータを迅速に処理する必要があると予想されるため、以下の機能を持った「機関データ管理運用システム」の開発・普及が必要である。

 

 

 

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