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2.2 単体要素での機関性能変化

舶用ディーゼル機関に使用される過給機では、排気タービンに付着するスケール或いは摩耗による翼クリアランスの増加等により過給機の効率低下が発生する。一方、燃料弁はキャビテーションにより、針弁にくわれが発生したり噴孔が摩耗により拡大する等の劣化が発生する。このように舶用ディーゼル機関の主たる構成部品の内、経年劣化する部品を図1の機関断面図上に示す。図中の1〜9が経年劣化部品であり、その番号の下に主な劣化状況を示す。

これら単体部品の経年劣化と機関性能との関連を検証するための実験を実施したが、その検証内容、検証方法、実施内容及び試験結果を概略取り纏めたものを表2.3に示す。また、図2.1は劣化部品の中から過給機、エアクーラ、燃料ポンプ及び燃料弁を選定し、これらの劣化量に対する燃費率、Pmax及び排気温度の変化を示した。この結果、次の事項が明らかになった。

1) 単体要素が各々の整備基準時間に達した場合、機関性能に与える影響が最も大きいのは過給機で、次いでエアクーラである。従って、掃排気系の劣化が機関性能に大きな影響を与える。

2) 燃料ポンプ、燃料弁の劣化が排気温度に与える影響は比較的小さいが、Pmaxへの影響は大きい。

 

2.3 劣化要素組合せ試験

単体要素劣化試験は、対象とする部品劣化が性能変化に及ぼす影響を純粋な形で明らかに出来る方法である。しかし、実船は、これらの劣化要素が複合して現れるため組合せ試験を実施する事が必要である。そこで複合時の状態をクリアにするため、機関性能シミュレーションで過給機がバランスする点を求め試験条件を決定し、組合せ試験を実施した。また、試験では実船を想定して燃料をA重油からC重油に変更し、実験機関はNC33を使用した。

試験概要を表2.4、要素劣化を組み合わせた場合の各組合せの相対的な差を図2.2に示す。この結果、以下の事項が明らかとなった。

1) 燃料系の劣化組合せはNOx,Pmaxが低下する特徴がみられる。

2) 掃排気系の劣化組合せは、単体要素劣化の場合と同様に排気温度が高くなる。また、 燃費率にも影響があることが予測される。

3) 各系統組み合わせ時を標準状態と比較した場合、燃料系・燃焼系組合せに比較して燃料系・掃排気系組合せがNOxを除く性能値に対して影響が強い。

4) 総合劣化組合せ時の燃費率は各系統変化率の合計より大幅に悪化している。これは図2.3に示すライナ温度から予測すると、熱損失や機械損失が増加しているためと考えられる。

 

 

 

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