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しかしながら、上述のように、フェリー事業は他のモードと激しい競争にさらされており、ある程度、市場原理を反映した各種割引がなされている場合が多いものと考えられる。

 

2.規制緩和が中・長距離フェリー事業に与える影響(予測)

1)新規参入者の出現の可能性

フェリー事業は、他の輸送モードに対しては需給調整はなされておらず、昨今の業界の状況を見た場合、業界全体として余剰利益が出ている状態にはないものと見受けられ、また、フェリー事業が、事業の開始に当たって大規模な初期投資を必要とすることに鑑みると、今般、需給調整規定が撤廃されたとしても、短期的に見た場合、フェリー業界に新規参入者が多数現れるとは想定しにくい。

 

2)他の輸送モードとの関係

RoRo船等の他のモードの関係についても、既述のとおり、既にトラック(道路)輸送、鉄道輸送等と激しい競争関係にあり、現行制度下でもRoRo船等の「新規参入」を妨げるものではなく、需給調整規制の撤廃そのものが大きな変化をもたらすものとは考えにくく、短期的には、現行制度における競争関係と大きく変わる可能性は少ないものと考えられる。むしろ、港湾運送等他の制度が変わることによる影響が大きいものと考える。

 

3)運賃に与える影響

運賃については、今般の規制緩和により、現行の総括原価主義に基づく認可制度から、事前届出制へと変更されることになるが、このことは、需給調整が廃止され、市場は新規参入、撤退が自由になることと相まって、運賃収入についても基本的に市場原理に委ねられるようになることを意味する。

こうしたことが、今回の規制緩和の「建前」であるが、既に述べたとおり、フェリー事業は、現行制度下においても、他のモードと激しい競争を強いられており、実勢運賃は、ある程度市場原理によって定まっている場合が多いのが実態である。個別のフェリー事業者の設定する運賃も競合するフェリー事業者との関係のみで決まるものではなく、他の輸送モードの影響も大きい。したがって、今回の規制緩和によって、現行の運賃がドラスティックに変更されることはないものと考えるが、運賃認可制がなくなることにより、一層市場に置ける力関係が反映されることになり、一定程度の運賃の低下又は多様化を招く可能性も否定できない。

 

 

 

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